矢張(読み)やはり

精選版 日本国語大辞典 「矢張」の意味・読み・例文・類語

やはり【矢張】

〘副〙 (「やわら」「やおら」などと同源の語か。「矢張」は後世あて字。「やわり」の時代も)
① 動かさないで、そのままにしておくさま、静かにじっとしているさまを表わす語。やほり。やっぱり。
※百丈清規抄(1462)五「面をばやはり置いて手をあちこちするは悪いぞ」
② 事態・状況が変化していないさま、同じであるさまを表わす語。依然として。やっぱり。
※虎寛本狂言・膏薬煉(室町末‐近世初)「『扨どこに付て吸はするぞ』『やはり〈略〉拇のはらに付て吸はせう』」
③ 予期した通りの事態であるさま、順当な事態であるさまを表わす語。やっぱり。
※尋常小学読本(1887)〈文部省〉四「京都の蛙も『大坂も矢張り京都と同じことだ』と云ひて」
④ さまざまに考えられても、または、さまざまな経過を経ても、結局は、同じ結果、同じ事態に終結することを認める気持を表わす語。やっぱり。
※箚録(1706)「余録と云へば、本録まだある様に聞へる。やはり箚録と云が穏かでよいぞ」
※尋常小学読本(1887)〈文部省〉七「空気には、おもみ無きやうに思はるれど、矢張りおもみあるものにて、空気より軽き物を浮ばする力あり」

やっぱり【矢張】

〘副〙 (「やはり」の変化したもの)
史記抄(1477)一四「言は一定死なうと知たらば、やっぱりをいて、やがて、未病先に売てとらうすものをなり」
② =やはり(矢張)②〔かた言(1650)〕
咄本・無事志有意(1798)畳算「ことわりの文をやっても、やっぱり呼ぶゆへ、とらまへてやろふと」
※俳諧・翁草(1696)「塩物に咽かはかする花ざかり〈乙州奈良はやっぱり八重桜かな〈沾圃〉」
※雑俳・柳多留‐二一(1786)「やっばり梅といふそうで公家てれる」

やっぱし【矢張】

〘副〙 「やっぱり(矢張)」の変化した語。〔かた言(1650)〕
洒落本・深川手習草紙(1785)下「是でもやっはし懲ねへのさ」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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