膏薬煉(読み)こうやくねり

日本大百科全書(ニッポニカ) 「膏薬煉」の意味・わかりやすい解説

膏薬煉
こうやくねり

狂言曲名雑狂言鎌倉と京都の膏薬煉が吸出し膏の効能比べをすることになり、交互に膏薬の名の由来や薬種を語り聞かせて自慢しあうが、優劣定まらず、膏薬の吸い比べを始める。鼻に膏薬のついた紙を貼(は)り、互いに吸い寄せ、吸い戻し、ねじゆがめねじ戻しするうちに、京都方(シテ)がしゃくり引きで相手を倒して勝ちとなる。前半の台詞(せりふ)、後半の動作は極端に誇張された内容で、いずれも奇想天外というほかはない。吸出し膏の名は、鎌倉方が名馬生食(いけずき)を吸い寄せた「馬吸い膏薬」、京都方がとてつもない大石を吸い付けた「石吸い膏薬」である。また薬種は雪の黒焼き、石のはらわたなどのたぐいで、流派によって異なる。

[池田英悟]

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