改訂新版 世界大百科事典 「石油パイプライン事業法」の意味・わかりやすい解説
石油パイプライン事業法 (せきゆパイプラインじぎょうほう)
日本の石油製品の輸送の多くは,水・海運によっており,陸上においてもタンクローリー輸送が多く,パイプライン輸送は諸外国に比して著しく遅れていた。1971年から72年にかけて,関東パイプラインや京浜パイプラインが,前者が石油14社の,後者が国鉄と石油9社などの共同出資によって設立され,本格的なパイプライン事業が始まった。このような動きの中で72年の6月に,石油パイプライン事業を促進し,同時にその施設の保安に規制を加えることによって,合理的で安全な石油輸送を実現するとともに公共の安全を確保し,石油の安定的で低廉な供給の確保に寄与することを目的として制定されたのが石油パイプライン事業法である。通産大臣,運輸大臣,建設大臣の共同の管轄で,石油パイプライン基本計画を策定し,事業は石油パイプラインの系統ごとにこれらの大臣の許可を得てなすこととされている。また工事や施設の安全に関しては,自治大臣も規制の権限を有している。このように法制度は整ったが,建設について周辺住民の反対が強く,事業の進展はほとんど見られない。
執筆者:来生 新
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報