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石油 せきゆpetroleum

翻訳|petroleum

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

石油
せきゆ
petroleum

天然に産する炭化水素主成分とする可燃性物質の総称。広義には,可燃性天然ガス液体原油,固体のアスファルトを含むが,狭義には原油だけをさすことが多い。天然の石油は精製石油類と区別するため原油と呼ばれる。液体の原油および天然ガスは地中に共存して同時に回収され,化石燃料中で最大の燃料源となる。石油は非常に多くの成分を含むが,主成分は炭化水素でパラフィン系,ナフテン系,芳香族に大別される。パラフィン系は天然ガスになるメタンから,精製されてガソリンになる液体,結晶性ワックスまで範囲が広い。ナフテン系は揮発性の液体からタール質のアスファルトまでを含み,芳香族系はおもにベンゼンからなる。比重は 0.60~1.0で水に浮く。沸点は 200~400℃で化学的に低級な炭化水素ほど低い。
地表に浸出した液状の石油は,古代より人々に知られていた。イラン,イラクその他の地域で採取された石油の一形態である瀝青やアスファルトは,舟の防水や道の舗装などに利用されてきた。大航海時代のヨーロッパ人も,アメリカとインドネシアで同様の黒い液状浸出を発見している。現代石油産業への大きな転機は,ランプの鯨油に代わって灯油が照明燃料に利用されたことである。石油を目的とした初めての採掘は,エドウィン・ローレンタイン・ドレークにより 1859年ペンシルバニア州タイタスビルで行なわれ,数十年のうちに原油の採掘はアメリカ,ヨーロッパ,中東,東アジアへと広まった。まもなく自動車の発達で,石油はガソリンの原料として新たな脚光を浴びることになった。今日ではケロシン,軽油潤滑油重油の原料として,また溶剤,ペンキ,アスファルト,プラスチック,人造ゴム,繊維,石鹸,洗剤,ワックス,ワセリン,薬品,爆薬,化学肥料などさまざまなものに精製加工される。
石油の成因にはいくつかの説があるが,有機成因説が有力である。すなわち,数億年前に生息した水生植物や動物の遺骸が積もって泥や砂と混じり合い,長い年月を経て堆積岩中で地質学的変化を遂げて生成されたとするものである。古生代(約 5億4200万年前から 2億5100万年前)に,有機物は徐々に密度の大きな粘土から多孔性,浸透性のある岩石へと移行し,最後に砂岩やシルトになった。こうして最終的に形成された堆積物を油層という。同じ岩石組織をもつ一連の油層や岩石組織は違っても近い層にある一連の油層をまとめて油田と呼び,同一地質学環境下の油田群のある地帯を石油地帯という。石油は地球上に広く分布しているが,量的には中東を中心に北アフリカ,カフカス,カスピ海,インドネシアを連ねるテチス海沿岸や,南北アメリカの一部,ウラル,ボルガ,西シベリア,アフリカ西岸,中国の一部などに集中的に存在する。おもな石油産出国は中東諸国,ロシア,アメリカである。
石油と天然ガスの生産は,試掘,掘削,回収の 3段階で行なわれる。陸上の石油埋蔵地とされる地域の大半はすでに掘削中であり,近海の海底油田が注目されている。地質学が油田探鉱に貢献できるのは,埋蔵有望な岩石組織の位置を決定するまでで,実際に石油が存在するかどうかは試掘して確認するよりほかない。現代の回転掘削機は 9000m以上の深さの油井を掘ることができる。発見された石油はさまざまな方法で回収される。地下の油層に閉じ込められた天然ガスや水は圧力を生じ石油を押し上げるが,自然の圧力が足りなければ人工的に水や蒸気を注入して圧力を高める。さらに回収率を上げるため,石油の粘性と毛細管作用を低くする二酸化炭素,重合体,溶剤などを注入することもある。石油はパイプラインやタンカーで製油所へ運ばれる。パイプラインのなかには 1日に 50万バーレル以上を輸送できるものもある。
精製の基本は蒸留で,この過程で原油は沸点の異なる留分(ガソリン,ケロシン,潤滑油など)に分けられる。さらに脱硫などにより不純物を除去したり,品質向上のため分解,改質などの化学処理が加えられる。熱分解法は石油留分を高熱まで熱するもので,使用範囲の狭い重油の分子を小さな軽油の分子に変え,留分の価値を高くするのによく利用される。改質法は特定試薬と接触させ,分子を細かくすることなく構造を変えるもので,パラフィン系ガソリンのオクタン価を上げるのに広く利用されている。

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デジタル大辞泉の解説

せき‐ゆ【石油】

種々の炭化水素混合物を主成分とする液状の物質。海底に堆積(たいせき)した生物遺体バクテリアの作用や熱・圧力で分解してできたとされる。天然のままのものを原油とよび、蒸留精製してガソリン灯油軽油ピッチなどを得る。燃料・化学工業用原料として重要。
特に、灯油俗称

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百科事典マイペディアの解説

石油【せきゆ】

天然に産する各種炭化水素を主成分とする可燃性鉱物性油,およびそれを精製して得られる潤滑油アスファルトなど石油製品の総称。狭義には原油,あるいは灯油のみをさすこともある。
→関連項目化石燃料クリーンエネルギー石油化学石油化学工業地下資源三菱商事[株]南スーダン

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世界大百科事典 第2版の解説

せきゆ【石油 petroleum】

油井から生産されたままの,液状炭化水素を主成分とし,微量の硫黄,窒素,酸素,金属などを含む天然化合物を原油といい,炭化水素系天然ガスとともに石油と総称される。各種燃料油,潤滑油,アスファルトなどの石油製品も広義には石油のなかに含まれる。
成因
 石油の成因については19世紀初頭以来,有機(生物)起源説と無機(無生物)起源説とが対立してきた。当初有力だったのは無機説であって,このなかには火山起源説,炭酸ガスアルカリ金属との接触によるとの説,カーバイドと水との反応によるとの説があり,化学者によって提案されたものが多い。

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大辞林 第三版の解説

せきゆ【石油】

〔「石炭油」の略。「せきゆう」とも〕
地下から産する、各種の炭化水素類を主成分とする液状の混合物。普通、黒褐色の粘稠ねんちゆうな液体。燃料や石油化学製品の原料。原油。
を精製・加工した石油製品の総称。ガソリン・灯油・軽油・重油などの燃料、潤滑油など。
特に、灯油のこと。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

石油
せきゆ
petroleum

天然に地下から産出する原油およびこれを精製加工して得られる各種液体燃料、潤滑油などの石油製品petroleum productを総称して石油という。石油はいうまでもなく、現代、エネルギー源として、また化学工業原料として、もっとも重要な資源である。地球堆積(たいせき)層に取り込まれた古代生物中の有機物に由来し、石炭と同じく化石燃料の一種である。petroleumという語はラテン語のterta(岩、石)を語源とし、ギリシア語のpetros(岩)とoleum(油)からつくられた。[原 伸宜・佐藤俊二]

石油利用の歴史と用途の拡大

石油の歴史はきわめて古く、メソポタミア、ペルシアなどの地方では、少なくとも紀元前3200年ころから人々に知られていたことを証する石油の遺跡がある。古い記録では『旧約聖書』にノアの箱舟の防水用としてアスファルトを使うことが記されており、日本でも668年(天智天皇7)に越(こし)の国(新潟県)から燃ゆる水、燃ゆる土を朝廷に献上したことが『日本書紀』に記されている。この燃ゆる水はまた「くそうず」とよばれ、臭水、草生水などの文字があてられた。当時はもちろん地表に自然にしみ出た原油やアスファルトが採取されたにすぎない。
 13世紀ころ、ビルマ、カスピ海沿岸などで、幼稚な手掘りによる原油の採掘が始められたといわれ、16~17世紀ころには簡単な石油の精製も行われたようである。日本でも1613年(慶長18)、越後(えちご)の真柄仁兵衛(まがらにへえ)が蘭引(らんびき)と称する簡単な蒸留装置により灯油を得た記録がある。
 その後1848年イギリスの化学者J・ヤングは、炭坑から湧出(ゆうしゅつ)した原油あるいは石炭乾留タールから、初めて蒸留と化学処理による灯油、潤滑油などの製造を研究して特許を得た。ヤングの方法はアメリカに伝わり、石炭油coal oilとよばれて、従来の植物油、動物油にかわり、原油や石炭から精製灯火用燃料(灯油)の製造が広まった。
 日本でも1850年(嘉永3)、新潟の蘭医山下真斎(しんさい)が、原油から薬用に灯油を製造したと伝えられている。しかし19世紀前半ころまでは、石油は灯火用、防水用、潤滑用、薬用などとして、一部の産油地域でわずかに利用されたにすぎない。
 石油産業が今日の大をなすに至った発端は、1859年、アメリカのセネカ石油会社の技師E・L・ドレークがペンシルベニア州オイルクリークで、初めて綱式機械掘りによる油井の掘削に成功(深度21メートル)したことである。これが近代油井の第1号とされ、同年が世界石油産業誕生の年とされている。
 日本では明治時代に入って、灯火用として植物油に勝る灯油の有望性に着目した石坂周造(1832―1903)が、1871年(明治4)義兄山岡鉄舟らの援助を受けて長野石炭油会社を設立し、アメリカから油井掘削機を購入して、長野県、新潟県、静岡県(相良(さがら))にかけて試掘を進めたが、結局は失敗した。日本で初めて近代的油田の形を整えたのは新潟県尼瀬(あまぜ)油田である。この油田は加藤直重らにより1880年以来手掘り井の試掘が進められ、1886年に順調な採油に成功した。続いて1888年に尼瀬油田の本格的開発を目的として日本石油会社が設立され、1890年アメリカから綱掘り式掘削機を導入して生産を拡大し、初めて近代的油田の形態に発展した。これが日本の近代石油産業の誕生とされる。しかしなお19世紀後半の石油の用途は灯火用としての灯油の生産が主体で、ガソリン留分はむしろ危険な副産物としてその廃棄に苦労していたのである。
 石油の用途が一変し、著しく多様化したのは、19世紀末ないし20世紀初頭以来で、その最初の動機となったのは、1879年アメリカのT・エジソンによる電灯の発明、1883年G・ダイムラーによるガソリン機関自動車の発明、1893年R・ディーゼルによるディーゼル機関の発明などであった。さらに第一次、第二次世界大戦で石油の重要性が高まり、石油産業の発展に大きい影響を与えた。
 まず20世紀に入り、電灯の普及により石油ランプは後退して灯油の需要が減少したが、重油やアスファルトが利用され始め、自動車の発展によりそれまでの廃棄物のガソリンは重要な石油製品となった。とくに1903年H・フォードがフォード自動車会社を設立し、数年内に独自の量産方式を確立して以来、ガソリンの需要は激増した。さらに第一次大戦を契機として航空機は急速に発達し、これに伴い高オクタン価ガソリンの製造もしだいに発展した。一方、汽船、軍艦などはしだいにディーゼル化が進み、船舶用燃料も石炭からしだいに重油に転換した。また第一次、第二次大戦の間に小型高速ディーゼル機関が著しく進歩し、自動車、機関車、トラクターなどの燃料として軽油の利用も増大した。これらの内燃機関の進歩に付随して、潤滑油もしだいに多品種化、高級化の道をたどっている。
 初め灯火用として登場した灯油は家庭用燃料に変身し、とくに第二次大戦後大きい用途を開拓した。同様に戦後家庭用燃料として普及したものに、石油精製で副生する液化石油ガス(LPG)がある。また第二次大戦後、航空機の主力はプロペラ機からジェット機へ移り、ジェット燃料も重要な石油製品となった。同時に自動車エンジンは戦時中の航空エンジンを上回るなど高性能化し、高オクタン価ガソリンが用いられるようになった。
 1950年代から中東地域に世界最大の油田が開発され、石油は各国で安価大量に入手できるようになった。かくしてエネルギー源の王座は石炭から石油へ大きく転換して石油大量消費時代に入り、いわゆるエネルギー革命を引き起こした。一方、石油化学工業の発展で、化学工業原料としても、石炭から石油への転換が並行して進行した。
 この当時、中東油田の開発など、自由世界の石油利権は大部分アメリカ、イギリスなど国際石油資本8社(メジャー)の支配するところであったが、1960年サウジアラビア、イラン、イラク、クウェート、ベネズエラの石油輸出5か国はOPEC(オペック)(石油輸出国機構)を結成し、その後加盟国も13か国に増え、しだいに資源ナショナリズムを強化して発言力を加えた。とくに1970年ころから国際石油資本8社の利権を削減して原油価格と供給量の自主調整権を握るようになり、1973年10月、第四次中東戦争に際し、一方的に原油公示価格の大幅値上げ(約4倍)を宣言し、いわゆる第一次石油危機(オイル・ショック)を招来した。さらに1979年、イラン革命が引き起こした第二次石油危機により、原油価格はますます暴騰した(第一次危機以前に比べて約20倍以上)。これらは世界経済に大きく影響を与え、激増を続けていた石油消費量も頭打ちとなったが、なお石油は世界エネルギーの総量の約42%を占め、これに石油系天然ガスを加えると約64%に達している。なお近年、イギリス(北海)、メキシコなど非OPEC国の原油増産と世界的な石油消費節減により、石油価格は1983年をピークとして急速に低下に転じている。[原 伸宜・佐藤俊二]

成因

石油はいろいろな地質時代の地層から産出するが、約60%は中生代(2億4700万年前から6500万年前まで)に属するといわれている。その成因については、1800年代から無機起源説と有機起源説とで論争が続いた。炭化水素が無機化学的に合成できることから、無機起源論者は、炭化水素が地下深所で炭素と水素から合成されたとする地球深部説か、地球創世時にすでに炭化水素が存在していたとする宇宙説を主張し、いずれの炭化水素も長い年月をかけて効率的に集積して石油になったと考えた。有機起源論者は、動植物の遺体からなる有機物が化学作用により原油を生成するとし、実験的に堆積岩の有機物質から原油状のものを抽出し有機説を唱えた。
 この論争に決着をつけたのは、現存する原油中に生物体からしか由来しないような物質(生物指標、バイオマーカー)が微量ながら発見された事実であった。たとえば、ヘミン(赤血球のヘモグロビン)やクロロフィル(植物の葉緑素)の誘導体であるポルフィリン類、そのほかコレステリン、カロチン、テルペンの誘導体のように光学活性を有する有機物が原油中に認められた。これにより石油の有機起源説は確固たるものとなった。
 石油の起源となった有機物は、太古の海や湖の底にたまったプランクトンや藻類、あるいは河川によって運び込まれた陸上生物の遺骸(いがい)などに由来し、土砂とともにすこしずつ堆積した。堆積物は時間の経過とともに地下深く埋没し、比重の関係で土砂のなかでもっとも細粒の粘土といっしょに堆積した有機物は、岩石化した頁岩(けつがん)中に濃縮される。とくに有機物を多く含んだ頁岩を石油根源岩とよんでいる。石油根源岩中の有機物のうち約90%はケロジェンkerogenという有機溶媒に不溶な固体で高分子化合物の集合体が占めている。このケロジェンは、ギリシア語のkeros(石油またはワックスをつくるもの)に由来している。残りの約10%は有機溶媒に可溶な有機物で、抽出性有機物またはビチューメンとよばれ、炭化水素はこのビチューメンに含まれる。生体有機物は炭水化物、タンパク質、脂質、リグニンより構成され、少量の炭化水素および色素も含んでいる。これらの成分が微生物によって、糖、アミノ酸、脂肪酸などの単体に分解される。その後、堆積物に取り込まれて、これらの一部は脱炭酸、脱アミノ作用によって炭化水素に変換され、ビチューメンとして保存されるが、大部分は縮合して腐植を形成し、還元環境下で縮合重合を繰り返してケロジェンに変化する。ケロジェンを熱乾留すると石油様物質を生成すること、世界の油田地域で地下のある深度から石油を発見していることなどから、石油根源岩中のケロジェンが埋没に伴う地温の増加によって石油炭化水素を生成するというのが最近の成因説である。なお、ケロジェンに変化する前の有機物質の相違によって、石油を生成しやすい(藻類など)タイプ、ガスを生成しやすい(陸上の高等植物など)タイプに分類される。[原 伸宜・佐藤俊二]

探鉱

石油が根源岩中で生成されたままでは、石油を生産することはできない。頁岩は粒子が細かく、すきまも非常に小さいため石油が動けないのである。生産可能な石油は、油層に濃集して蓄えられていなければならない。油層は地下の空洞ではなく、すきま(孔隙(こうげき))を十分有した砂岩あるいは石灰岩などの岩石の層である。この岩石を貯留岩という。石油を貯留するためには、貯留岩を、石油が他に移動することを妨げる緻密(ちみつ)な岩石(帽岩)で覆うような構造が必要である。
 このような構造をトラップといい、代表的なものは背斜型トラップである。石油の探鉱は、この地下に存在するトラップを探し出すことであるが、数百あるいは数千平方キロメートルの広大な地域において、しかも数千メートルの地下に眠っている石油を発見することは非常に困難な仕事である。石油を開発するには、まず、対象地域の事前調査、鉱業権申請、利権交渉、入札などの手順を踏み、鉱業権を取得する。探鉱の初期段階においては、広域の地質調査のために、航空写真解析、航空機による磁気探査および重力探査などの概査が実施される。次に、地下に分布する堆積物が地表に露出する箇所において地表地質調査、サンプリングが行われ、地化学分析、古生物調査、堆積学分析が実施され、層序の年代、岩石の物性、根源岩の産油ポテンシャルなどの研究評価が行われる。精査として実施される地震探鉱は、陸上では火薬または機械等で地殻に震動を与え、地下の地層面からの反射波を受信記録して、油田構造(トラップ)の存在を探す。海域では震源として圧縮空気の発破を用いている。これらの調査を総合的に解釈して、試掘位置を決定し、油田構造上に掘削する。試掘の深度は3000~4000メートルが多く、ときには5000メートルにも達することがある。1坑井当りの費用は、陸上で5~10億円、海上では30~50億円かかる。試掘の結果から、油田の採算性を検討し、生産・開発に移行するか、鉱業権を放棄するかを判断する。試掘によって石油を発見する確率は10本に1本の割合で、さらにその石油が規模の点で十分生産の対象となりうる場合は4分の1に減少する。すなわち、100本の井戸を掘ったとしても商業規模の油田を発見できるのは、2~3本ということになる。石油の探鉱は、他のどのような事業よりもリスクの高い事業である。[原 伸宜・佐藤俊二]

原油

地下から産出、採取されたままの未精製の石油を原油crude oilという。一般に黒褐色または黒緑色の粘稠(ねんちゅう)な油状物質で、多少の泥水分を含む。[原 伸宜・佐藤俊二]
組成
主成分は炭素原子数5~40程度の複雑な各種炭化水素混合物であるが、このほかにガス状炭化水素(湿性天然ガス)も溶存し、また非炭化水素成分として若干の硫黄(いおう)、酸素、窒素化合物や少量の金属化合物を含有する。これらの非炭化水素成分は、とくに高沸点留分ほど多い。
 石油炭化水素を大別すると、パラフィン、オレフィン、ナフテン(シクロパラフィン)、芳香族炭化水素の4種に分類され、原油中にはパラフィンおよびナフテン炭化水素がもっとも多く、芳香族炭化水素は比較的少ない。オレフィン炭化水素は石油が熱分解すると容易に生成するが、原油中にはほとんど含まれていない。これら4種の炭化水素組成はガソリン、灯油などの低沸点留分では明確であるが、重油、潤滑油などの高沸点留分では、1分子が1個のナフテン環に長いアルキル側鎖が結合した「パラフィン性の高い成分」や、数個のナフテン環のほかに芳香族環も結合した「ナフテン性の高い成分」などの複雑な混合物よりなり、炭化水素種族の区別は不明確となる。[原 伸宜・佐藤俊二]
性状
炭化水素の比重は一般にナフテン系よりもパラフィン系が低く、また同一種族では高沸点成分よりも低沸点成分が低いため、原油の比重はその組成と相関関係があり、原油は比重の大小により分類されることが多い。国産原油では比重(D15/4℃/4℃の水に対する15℃における密度比)の値により、軽質油(0.830以下)、重質油(0.905以上)、この中間の中質油などに分類され、軽質油はパラフィン系が多く、重質油はナフテン系が多い。輸入原油に対してはアメリカ石油協会が制定したAPI度が使われる。この値は、比重(D60/60°F:60°Fの水に対する60°Fにおける密度比)から、次式によって求められる。

API度は通常の比重とは逆に、軽質のものほど大きい値となり、比重1.0ではAPI度10となる。パラフィン基原油は軽質でパラフィン系炭化水素に富み、ガソリン留分の得率が多く、直留ガソリンのオクタン価は低いが、良質の軽油、潤滑油原料となり、残油にはパラフィンろうが多く含まれている。一方、ナフテン基原油は重質でナフテン系炭化水素に富み、ガソリン留分の得率は少ないが、直留ガソリンのオクタン価は比較的高く、残油にはアスファルト分を多く含む。中間基原油はこれらの中間的性質を示す。このほか硫黄分の多い原油をサワー原油、硫黄分の少ない原油をスイート原油という。
 日本の輸入原油の主力の中東系原油は、一般にパラフィン基でサワー原油が多い。[原 伸宜・佐藤俊二]

原油埋蔵量・生産量・石油消費量


 地球上の石油の分布は著しく偏在しており、原油の確認埋蔵量約1111億キロリットル(1984)のうち約57%は中東諸国が占め、これに北アメリカ、旧ソ連地域、北アフリカを加えると、世界の原油の80%以上はこれら四大地域に集中している。一方、世界の原油年産量約31.5億キロリットル(1984)のうち50%近くは旧ソ連地域、アメリカ、サウジアラビアのだけで占められている。近年このほかに北海油田を開発したイギリス、急速な石油増産を進めたメキシコが有力な産油国として加わっている。この原油生産量の大部分は石油消費量に相当するとみなせるが、アメリカは年間約9億キロリットルの石油を消費し、これに次ぐ旧ソ連、日本を加えると、世界石油の約50%はこれら3国だけで消費されている。第二次大戦前アメリカは石油輸出国であったが、現在では消費量の激増により、自国産の石油で需要の約65%を満たしているにすぎず、世界最大の石油輸入国となっている(イギリスは北海油田の開発で自給・輸出国に転じた)。自国産石油で需要を完全に満たし他の社会主義国に石油を供給していたソ連も、将来は完全自給を続行できるか否かは疑問とされている。ともかく、アメリカは最大の石油産出国であるのに対して、世界第3位の石油消費国である日本は、新潟・秋田・山形各県の油田地帯に産する石油資源はきわめて乏しく(年間45万キロリットル程度)、需要の約99.8%を中東地域その他から輸入している。[原 伸宜・佐藤俊二]
可採年数
原油年産量Pに対する確認埋蔵量Rの比(R/P)を可採年数とよび、油田の寿命、石油資源の寿命を推定する目安としており、1984年におけるこの値は全世界で約35年であった。しかし1950年当時の可採年数は約20年、1960年のそれは約35年であったことからみても、この値からただちに石油の寿命を判断することはできない。これは、従来世界の原油生産量および石油消費量は逐年増大してきた反面、一方では生産量を上回る新油田が開発され、確認埋蔵量も年々更新されて、可採年数は大きい変動がなく、ほぼ平衡状態を保ってきたからである。しかし、1970年代から世界最大の石油の宝庫である中東地域の新油田発見量が激減し、この間、北海、アラスカ、メキシコ、中国などで新油田の開発があったが、規模は中東地域の莫大(ばくだい)な開発量に及ばず、世界の原油確認埋蔵量の増加はしだいに頭打ちの傾向にある。他方、前述のように1973年に起こった石油危機の影響で、1974~1976年にわたり、石油史上初めて石油消費量(生産量)の低下ないし頭打ちがおこり、その後の増加も鈍化している。石油危機は世界的に経済不況を引き起こしたが、石油の消費節約を促進し、石油寿命を多少でも引き伸ばす効果をもたらした。[原 伸宜・佐藤俊二]
究極埋蔵量
開発済みの油田に対する確認埋蔵量に対して、未発見の油田を含めた全地球の原油埋蔵量を究極埋蔵量とよぶ。もとよりその真の値を知ることはできないが、ムーディーは、将来海底油田の掘削が水深2000メートルまで、採油率が40%まで可能になると仮定し、地質学的・推計学的にこれを算定して究極埋蔵量を3040億トンと推定している。このうち1976年までに480億トンが生産され、同年の残存推定埋蔵量は2560億トン(発見確率95%で1550億トンから、確率5%で4600億トン)である。今後世界人口の急増による世界総エネルギー量の増加を考えると、この残存埋蔵量は石油需要をまかなうには数十年程度と推定され、エネルギーに占める石油の主役は、21世紀前半までには終わると考えられている。[原 伸宜・佐藤俊二]

石油精製法

原油をそのまま燃料として使用することもあるが(原油の生だき)、大部分はこれを精製して各種の石油製品とする。[原 伸宜・佐藤俊二]
原油の蒸留

 まず原油は水分や夾雑(きょうざつ)物を除いたのち、常圧蒸留により、蒸留ガス、ナフサ、灯油、軽油の各留分に分別し、留出しない高沸点留分は常圧残油となる。この原油の常圧蒸留操作をトッピングtoppingとよぶ。原油はパイプ式加熱炉(パイプスチル)中のパイプを高速で通って350℃程度の所要温度に加熱されたのち、精留塔のやや下段に噴射送入される。精留塔は鋼製の高い塔で、塔内に数十段のトレイ(棚)があり、高いトレイほど温度が低く保たれ、沸点の低い成分ほど上段のトレイ上に凝縮する。トレイの構造は泡鐘型、バルブ型など各種のものがあるが、現在ではバルブ型トレイが主体で、これには凝縮液を支えるためのバルブ型の蓋(ふた)がついた多数のライザー(孔)がある。精留塔下段より上昇する油蒸気はライザーを通り、バルブを押し上げてトレイ上の凝縮液をくぐり抜ける。この気液接触により、各トレイ上にはその高さに応じて沸点範囲の異なる留分が凝縮し、連続的に精留が行われる。塔内で凝縮しない蒸留ガスおよび最低沸点留分のナフサは、塔頂より油蒸気として留出し、冷却されてナフサは凝縮する。灯油、軽油などの中間留分は、それぞれ塔内の適当な高さのトレイから側流として取り出す。また、塔内で気化しない最高沸点留分は、残油として塔底から抜き出される。通常、ナフサはさらに軽質ナフサと重質ナフサに分留され、また軽油もその重質分を重質軽油として分けることが多い。各留分の分留温度(沸点範囲)はだいたい、軽質ナフサ約25~100℃、重質ナフサ約80~200℃、灯油約150~270℃、軽油約200~350℃、重質軽油約300~350℃、常圧残油約350℃以上である。
 以上のように各分留温度は厳密に一定したものではなく、原油の種類、各製油所の生産計画などに従って、それぞれの製品規格に適合する範囲内で適当に調整される。なお精留塔の側流として得られる灯油、軽油などの中間留分は、トレイ上で常時低沸点成分の蒸気と接触しているため、その一部が溶解している。このままでは精留が不完全であるため、これをいったんストリッパーに通し、水蒸気を吹き込んで溶存低沸点成分を蒸発させ、これを一段上のトレイへ送り返す。この操作をストリッピングstrippingという。原油の常圧蒸留で得られる残油はおもにこのまま重油製造材料に用いられるが、一部はこれをさらに減圧蒸留して、潤滑油やアスファルト、パラフィンろうなどの製造が行われる。
 残油の蒸留を減圧下に行うのは、このままさらに高温で蒸留すると熱分解してしまうからで、一般に水銀柱10~100ミリメートル程度の減圧が用いられる。減圧蒸留装置は減圧系統が付属しているほかは、原油の常圧蒸留装置と類似しており、主要部はパイプ式加熱炉と減圧精留塔からなる。減圧下に各成分の沸点が低下する点を除くと、精留の原理は常圧蒸留とまったく同一である。この場合は塔頂から減圧軽油(重質軽油)が、また塔側からはトレイの高さに応じて3~4留分の各種粘度の潤滑油留分が留出し、塔底からはアスファルトが抜き出される。塔側流の各種留分は常圧蒸留の場合と同じように、ストリッパーを通してストリッピングを行う。また潤滑油の製造のほかに、接触分解原料油としての減圧軽油の分取や、重油の間接脱硫法の前処理としても、残油の減圧蒸留が行われる。以上の原油の常圧蒸留および残油の減圧蒸留による分留で、すべての燃料油、潤滑油などの素材が得られ、これを多くの精製工程へ送って各種石油製品が製造される。[原 伸宜・佐藤俊二]

各種石油製品の製造と用途

石油、天然ガスを原料として生産される燃料油、潤滑油などを石油製品という。[原 伸宜・佐藤俊二]
ガソリン
石油製品のなかでももっとも複雑な工程を必要とするのはガソリンで、量的に自動車用ガソリンの製造が中心となる。自動車用ガソリンとしては、オクタン価の高いイソパラフィンや芳香族炭化水素を主成分とする必要があるが、原油中のガソリン留分にあたるナフサは、オクタン価の低いノルマル・パラフィンやナフテン炭化水素が主成分であり、このままではガソリンとして使用できない。通常、自動車用ガソリンは、改質ガソリン、接触分解ガソリン、直留軽質ガソリン、異性化ガソリン、水素化分解ガソリン、熱分解ガソリン、アルキレートなど、各種製法によるガソリンを適度に配合して調製される。
 改質ガソリンは、白金‐レニウム触媒により重質ナフサを接触改質してその化学構造を変えた高オクタン価ガソリンで、自動車用ガソリンの主材料に用いられる。その主反応はナフテン炭化水素の脱水素による芳香族化で、芳香族炭化水素を多く含む。接触分解ガソリンは、ゼオライト系またはシリカ‐アルミナ触媒により、重質軽油(減圧軽油)を接触的に熱分解(クラッキング)して得られる高オクタン価ガソリンで、イソパラフィン、イソオレフィンに富み、改質ガソリンに次ぐ自動車用ガソリンの主材料となる。直留軽質ガソリンは、ナフサ留分中比較的オクタン価の高い軽質ナフサをスイートニング(悪臭酸性物質のメルカプタン類の除去)または水素化精製により精製したガソリンで、これ単独ではオクタン価不足で使用できないが、高オクタン価ガソリンへの配合材となる。[原 伸宜・佐藤俊二]
液化石油ガス
原油の蒸留ガス、接触改質・接触分解・水素化分解などで副生するガスから、ガス回収装置でプロパン、ブタンを主とする液化石油ガス(LPG)が回収され、家庭用燃料に使用される。なお、プロパン、ブタンはノルマル・パラフィンであるが分子量が小さいため、比較的オクタン価が高く、自動車用(おもにタクシー)燃料としても使用される。[原 伸宜・佐藤俊二]
灯油、軽油
おもにストーブ用、こんろ用などの家庭用燃料として使用され、軽油はディーゼル自動車のほか鉄道用・船舶用などの小型高速ディーゼル機関用燃料として使用され、これらはガソリンの製造に比べると簡単である。
 精製の主目的は公害上の有害成分である硫黄分の除去で、これには水素化精製が行われる。これは水素加圧下にコバルト‐モリブデン系触媒により、硫黄、酸素、窒素化合物を選択的に分解除去する操作で、軽質直留ガソリンの精製にも応用されている。[原 伸宜・佐藤俊二]
ジェット燃料
ジェット機用のジェット燃料は正しくは航空タービン燃料油といわれ、これには灯油型とナフサ型がある。前者は灯油留分、後者は重質ナフサ留分を主とするもので、これらを水素化精製、調合して製造される。ジェット燃料は発熱量が高く安定な燃料で、もちろんオクタン価とは関係がない。[原 伸宜・佐藤俊二]
重油
重油は常圧残油と重質軽油の混合によって調製され、日本ではA・B・C重油の3種の製品に分け、この順に軽油配合量が少なくなり(C重油は大部分常圧残油)、しだいに粘度が高く硫黄分の多い製品となる。A重油はおもに船舶用など大型ディーゼル機関用燃料、C重油はおもに電力用・一般ボイラー用燃料として使用され、B重油は両用途に使用される。
 重油の脱硫は困難で、かつては未精製で使用されたが、現在ではすべて脱硫処理が行われている。重油配合用の重質軽油は既述のように水素化精製により脱硫されているが、常圧残油も配合前に水素化脱硫を行う。この水素化脱硫は原理的に灯油・軽油の水素化精製と同一であるが、触媒にはおもにニッケル‐モリブデン系が使用される。常圧残油は硫黄分が多いうえ、触媒を汚染劣化させるアスファルト分および金属化合物を含むため、通常の水素化精製よりもはるかに困難で、過酷な条件と多量の触媒の消費を伴う。この困難を避けるため、常圧残油の減圧蒸留により減圧残油(アスファルト分)を除いた留出油を灯油・軽油と同様に水素化精製したのち、減圧残油と合する方法も行われる。前者の方式を直接脱硫法、後者の方式を間接脱硫法とよび、日本では両方式が併用されている。
 日本の輸入原油は硫黄分の多い中東系が主であるため、公害防止上重油の脱硫は各国に先駆けて行われ、硫黄分のもっとも多いC重油では、電力用1%以下、一般用2%以下まで脱硫処理が行われている。なお、灯油・軽油や重油の水素化精製・脱硫操作で発生する硫化水素から硫黄が回収される。[原 伸宜・佐藤俊二]
潤滑油
潤滑油はすべての機械摩擦部に減摩用として用いられ、用途によりきわめて多種類の製品がある。これらは常圧残油の減圧蒸留で得られた各潤滑油留分から、粘度および精製度の異なる材料油を製造し、これを適度に調合して多くの製品とする。一般潤滑油用の材料油は、各留分の溶剤脱ろうおよび白土処理によって精製される。溶剤脱ろうは、メチルエチルケトン、液化プロパンなどろう分を溶解しがたい溶剤で原料油を処理冷却し、凝固点の高いろう分を析出させる操作で、この操作によりパラフィンろうが副生する。白土処理は、酸化されやすい不安定成分を活性白土で吸着除去する操作である。
 また内燃機関用潤滑油など、粘度指数が高く安定度のよい性質が要求される高級潤滑油の材料油は、脱ろう前に溶剤抽出を行い、これらの性質が劣るナフテン性の高い成分を除去する。この溶剤としては、ナフテン成分を溶解しやすいフェノール、フルフラールなどがおもに用いられ、除去されたナフテン成分は重油調合用とする。また高級潤滑油では、白土処理にかわり、水素化精製による不安定成分の除去が行われることが多い。
 潤滑油には用途により、酸化防止剤、凝固点降下剤、粘度指数向上剤など、各種の添加剤が適宜加えられる。また潤滑材料油と金属せっけんの混合によりグリースが製造され、低粘度潤滑油留分を高度に精製して、無色透明の流動パラフィンが製造される。[原 伸宜・佐藤俊二]
その他の石油製品
以上のほか、石油精製では重質石油留分の過酷な熱分解によるコーキング法も行われ、電極材料、冶金(やきん)用炭素材料としての石油コークスを製造し、この際、熱分解ガソリン、分解軽油が副生する。また減圧残油からは舗装材、防水剤としてのアスファルトが製造される。[原 伸宜・佐藤俊二]

日本の石油事情

石油資源の乏しい日本では、需要の約99.7%を海外から輸入しているため、この原油輸入量はほぼ石油消費量に対応している。第一次石油危機の1973年(昭和48)まで、世界の石油消費量は10年ごとに倍加する上昇を示したが、日本ではこの高度成長時代に消費量は6年ごとに倍増する勢いを示した。この1973年に日本の原油輸入量は過去最高の約3億キロリットルに達したが、その後は頭打ちからさらに低下を続け、年間消費量は2.0億~2.2億キロリットル程度となっている。かつて日本の総エネルギー中に占める石油依存率は77.4%(1973年度)にも達したが、石油危機後、石油代替エネルギーの導入や石油備蓄などエネルギー安定供給確保のための政策が行われたことにより省石油が進み、石油依存率は徐々に低下し2000年度(平成12)では51.8%(資源エネルギー庁調べ)となった。
 石油製品の消費構造は各国によってかなり異なり、日本では石油消費量(販売量)に占める各製品の内訳(2000)は、ガソリン23%、ナフサ19%、ジェット燃料2%、灯油12%、軽油17%、重油24%などとなっている。日本は諸外国に比べて用途別では産業用が多く、民需用が少ないため、重油と石油化学用ナフサの比率が高く、ガソリン比率が低いことが著しい特徴である。たとえばアメリカではガソリンの比率が40%以上を占めているのに比べ、日本では23%(1984年当時は15%)にすぎない。日本の自動車数はアメリカに次ぎ世界第2位であるが、駐車施設、道路事情などでその実動率が低いことを示している。日本の輸入原油のナフサ(ガソリン留分)得率は平均22%程度で、ガソリン製造原料としては余剰となり、この分が石油化学工業原料として利用されている。かつてはこのバランスがとれていたが、石油化学工業の発展でナフサが不足となり、現在では石油化学用ナフサを一部輸入している。石油危機以前の高度成長時代、石油化学用ナフサがガソリン消費量を上回っていたが、低成長時代に入りこれが逆転し、重油とともにその消費量が減少した。
 1974年OECD(経済協力開発機構)の下部機構IEA(国際エネルギー機関)では、石油危機以来の不安定な石油需給に対応し、非常時の原油相互融通を計画し、加盟各国に1980年までに消費90日分の石油備蓄を勧告した。これに基づき日本では1975年(昭和50)石油備蓄法を制定して、民間企業に処理量90日分の備蓄を義務づけ、各石油会社では各製油所のほか、鹿児島県喜入(きいれ)、沖縄、北海道などに大型石油備蓄基地を設け、1981年3月にこの備蓄を達成した。一方、政府では、1978年には3000万キロリットルの備蓄を達成する計画を提唱、同年タンカー備蓄を開始、1979~1982年にかけ半官半民の石油備蓄会社6社(青森県むつ小川原、北海道苫小牧(とまこまい)東部、秋田県男鹿(おが)、福井県福井臨港、福岡県白島(しらしま)、長崎県上五島(かみごとう))を設立した。1983年より備蓄基地による保管を開始(タンカー備蓄は1985年終了)、1989年計画を達成した。なお、1987年には国家備蓄を3000万キロリットルから5000万キロリットルに、民間備蓄を90日から70日にすると提言し、国家備蓄は1998年に5000万キロリットルを達成している。また、2005年には石川県七尾など3か所に国家石油ガス備蓄基地が完成した。
 2007年現在、国内で稼動している国家石油備蓄基地および石油共同備蓄基地は以下の12基地である。北海道共同備蓄、苫小牧東部、むつ小川原、岩手県久慈(くじ)、秋田、新潟共同備蓄、福井、愛媛県菊間、白島、上五島、鹿児島県串木野(くしきの)、鹿児島県志布志(しぶし)。国家・民間備蓄をあわせた日本の石油備蓄量は9218万キロリットル、182日分(2007年12月末時点の保有量)である。[原 伸宜・佐藤俊二]
『石油学会編『新石油事典』(1982・朝倉書店) ▽日本石油株式会社編『石油便覧』(1982・石油春秋社) ▽石油学会編『新石油精製プロセス』(1984・幸書房)』

出典|小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について | 情報 凡例

世界大百科事典内の石油の言及

【エネルギー革命】より

…エネルギー消費の構成が急激に大きく変化することをいう。産業革命期における人力・水力から蒸気力(石炭を利用)への転換も一例であるが,一般には,第2次世界大戦後,世界的に起こった石炭から石油への急激なエネルギー源の転換をさす。固体エネルギーから流体エネルギーへの転換であることから,〈エネルギーの流体化〉ともいわれる。…

【エネルギー資源】より

…エネルギーは人類の生存にとって欠くことのできないものであるが,今日,主として利用されているのは,石油,石炭,天然ガス,水力,核燃料などによるものである。このほか,太陽の光や熱,川の流れ,風,あるいは牛糞,廃品など,対価を支払わずに利用されているエネルギーも大量にあるが,通常,エネルギー資源という場合には,対価の支払を必要とする商業的資源を指している。…

【原油】より

…油井から採取されたままの天然の石油をいう。原油は一般に黒褐色の粘い液体である。…

【炭化水素】より

…一方,(3)脂肪族か芳香族かで炭化水素を二分する分類も広く用いられている。
[性質]
 メタンやエタンのような気体分子,石油やベンゼンのような液体分子,ナフタレンのような固体分子があるが,いずれも水に溶けにくくエーテルなどの有機溶媒に溶けやすい。飽和炭化水素は一般に安定であるが,条件によってはラジカル反応を受ける。…

※「石油」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト世界大百科事典 第2版について | 情報

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