砧物(読み)きぬたもの

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「砧物」の意味・わかりやすい解説

砧物
きぬたもの

日本音楽の楽曲分類名称。能およびその三味線音楽化したものと,地歌箏曲における砧の擬音的表現を中心とした器楽曲類とがある。 (1) 能 古名『碪女 (きぬたおんな) 』。四番目物。世阿弥作。 (2) 半太夫節 江戸半太夫作曲。謡曲を浄瑠璃化したもの。 (3) 河東節 1世十寸見河東作曲。半太夫節を改作したもの。ただし4世河東が延享3 (1746) 年に作曲した『常磐の声』のほうが謡曲に近い。 (4) 地歌 (a) 『姫小松』収載曲『砧』。 (b) 佐山検校作曲『砧』。本調子。 (c) 堺の島住勾当作曲『三段砧』。二上り。前唄がある。 (d) 作曲者未詳『四段砧』。『京砧』ともいわれる。本調子,三下り合奏曲。前奏に『三段獅子』がつく。 (5) 箏曲 (a) 生田検校作曲『砧』。平調子。文政5 (1822) 年弥之一蔵板本に譜が収録。 (b) 八橋流表組付物『砧』。 (c) 継山流表組付物『砧』。 (d) 八橋流奥組付物『真の砧』。 (e) 山沢勾当伝承『砧』。 (a) の編曲。文政8 (1825) 年『山田の落穂』収載。 (f) 山田流箏曲『四段砧』。長谷川検校編曲か。 (e) を本手とし,これに雲井調子の替手を合奏。 (g) 生田流箏曲『二重砧』。 (a) を編曲したものに「砧地」を合奏。『三段獅子』の前奏がつく。 (h) 光崎検校作曲『五段砧』。 (i) 山田流箏曲『岡康 (安) 砧』。原曲は長唄三弦曲か。作曲者については異説が多い。山田流では,藤植流胡弓として伝えられたものを山室保嘉らが箏曲に移し,「地」または替手を合奏させる。 (j) 山田流三弦曲『新砧』。作曲者不詳。中能島派に伝わる。 (k) 新日本音楽。宮城道雄作曲『唐砧』『遠砧』『砧』がある。

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世界大百科事典(旧版)内の砧物の言及

【砧】より

…これらの曲には,佐山検校作曲の手事物《三段獅子》の前歌《うかれめ》と初段とを前奏として付すことがあるが,《新砧》は,《八千代獅子》ないし中能島欣一作曲の前奏が付される。以上の楽曲を総称して〈砧物〉と分類することも可能で,これに宮城道雄以降の新作や,他の砧を題材とする曲をも含めることもある。【平野 健次】。…

【箏曲】より

… 八橋の時代には,箏は流行歌曲の伴奏にも用いられ,また三味線や一節切(ひとよぎり)の尺八とも合奏され,若干の器楽曲も存在した。そのなかの《すががき》《りんぜつ》《きぬた》などは,箏の器楽曲としても独立するとともに,さまざまな類曲が作られ,〈段物〉(〈調べ物〉とも),〈砧物〉などとして,組歌に付随して教習されるようになった。流行歌謡の〈弄斎(ろうさい)節〉を箏曲化した〈弄斎物〉の楽曲とともに,すべて組歌の〈付物(つけもの)〉として扱われる。…

※「砧物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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