デジタル大辞泉 「合奏」の意味・読み・例文・類語
がっ‐そう【合奏】
[補説]作品名別項。→合奏
(1)単一楽器による独奏に対して,二つ以上の楽器による演奏形態(まれに声楽を含む)およびその音楽をいう。合奏には,1声部1楽器で奏する重奏と,各声部に複数の楽器をあてるものとに大別される。重奏の典型は室内楽で,声部数によって二重奏,三重奏(トリオtrio),四重奏(クアルテットquartetto)などと呼ばれるし,使用楽器によってピアノ三重奏,弦楽四重奏,管楽八重奏などとも称される。また,ジャズ・バンド,ハワイアン・バンドといった形態もあるし,中世日本の能の囃子(はやし)や近世邦楽における箏,三味線,尺八による三曲合奏も基本的には重奏形態である。アジアではしばしば声(歌,掛声)が重要な要素として付加される。
各声部複数楽器の代表は大規模編成の管弦楽だが,弦楽器のみによる弦楽合奏,管楽器のみによる管楽合奏あるいは吹奏楽,マンドリン合奏,軽音楽グループの合奏なども含まれる。アジアにおける大規模合奏の例にガムランや雅楽がある。
西洋音楽における合奏の歴史は古い。16世紀にいたるまで声楽が音楽の主流を占め,器楽は主として声楽曲の編曲として,あるいは声楽と器楽の合奏として存在していたが,バロック時代に入ると合奏音楽は独自の様式をうちたて,声楽と器楽合奏はほぼ同等な比重をもつようになった。古典派からはこの関係は逆転し,合奏音楽が中心となっている。
(2)フランス語のアンサンブルensembleを使った場合には,おもに重唱をさす。特に18世紀中葉以降,オペラやオラトリオの中で数人の独唱者によって重唱される部分はアンサンブルと呼ばれ,人物の心理描写にあてられることが多い。代表的な例は,《フィガロの結婚》第2幕の七重唱や,《リゴレット》第3幕の四重唱などである。また,合唱および合奏技法をさす語として,演奏のバランス,調和,統一性に対して慣用語的に〈アンサンブルが良い(悪い)〉ともいう。
執筆者:高野 紀子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
音楽の演奏形態の一つ。独奏とは反対に複数の奏者が協同する場合をさす。狭義には器楽についてのみこの用語が使われるが、広義には声楽の場合の合唱を含めることもできる。フランス語のアンサンブルが「いっしょに」という語義と同時に、衣服や家具まで含めた「統一体」という意味をもっているように、部分の集合としての全体が音楽となるところに特徴がある。したがって、合奏形態がとられる音楽は、社会の構造・慣習・価値観などが反映されていることが多い。その例としては、パプア・ニューギニアのイアトモイ部族の竹笛二重奏が親族組織上の二元論の表明であったり、尺八の連管、箏(こと)・三味線の連弾(つれびき)、浄瑠璃(じょうるり)や長唄(ながうた)での相(あい)三味線(楽器担当者と声楽家が半永続的にペアとなること)などにおいて、宗教的ないし芸術的一体感を目ざすことがあげられる。同様に、国歌、革命歌、軍楽、宗教音楽(教会や寺院での)などにみられる合奏(唱)形態も、それぞれの目的に応じた連帯感の高まりに直結している。西洋の管弦楽(オーケストラ)、東南アジアのガムランをはじめとする音楽、東アジアの雅楽などには、楽器、楽器群、リーダー(指揮者・主奏者)の間にヒエラルキーが存在し、一般社会の構造と無関係ではない。
音楽的な効果の違いからは、二重奏(唱)、三重奏(唱)などやそれらの組合せの形態が、独立した演奏形態(ドゥオ、トリオ、カルテットなど)となることもあるし、ある楽曲(演奏)のなかで構成上の意図により特定の箇所で使い分けられることもある。後者の例としては、オペラのクライマックスで重唱・合唱を使ったり、管弦楽曲のなかで意識的に小編成の合奏を配置することがある。一般に大規模な合奏になるほど、楽器(群)の間で音楽的機能上の役割分担が明確に区別される。それは通常、旋律、リズム、和声、コロトミー(音楽的句読法)、装飾など、楽器の特性に応じて決定される。
[山口 修]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…声楽に対する言葉で,楽器により演奏される音楽をさすが,器楽に含まれる形態にも部分的に声楽を含むものがある(ベートーベンの《第九交響曲》など)。器楽は演奏に要する楽器の編成にしたがって独奏,重奏,合奏に区別され,さらに使用楽器によってピアノ独奏,弦楽四重奏,クラリネット五重奏(弦楽四重奏とクラリネット一つ)などに分けられる。複数奏者による編成のうち,各声部を独立した1人の奏者が受け持つ場合を重奏,2人以上からなる声部を含む場合を合奏と呼ぶのが普通である。…
※「合奏」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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