…ほかにも,怪奇ともナンセンスともつかぬ作品は無数にあり,核爆発によって文明が滅びた後に生き残った数人(この設定も低予算SFに多く,いまだに作られている)の中に,ギャングが1人,ストリッパーが1人いて,彼らが三つ目の食人ミュータントに襲われるという,ロジャー・コーマン(1926‐ )監督の《原子怪獣と裸女》(1956)のような珍品も現れ,“Z”movie,“Z”trash(B級ならぬ〈Z級映画〉,これ以下はないという〈最低のがらくた〉)と呼ばれるに至った。こうしたピンからキリまでのSFラッシュの中で,ハリウッドの名門というべきMGMが,初めてSFに手を染め,シェークスピアの《テンペスト》を宇宙物に翻案した大作,F.M.ウィルコックス(1905‐64)監督の《禁断の惑星》(1956)を製作。若い探検隊員に愛娘を奪われたくない博士の潜在意識が,姿なき怪物と化して宇宙船を襲うというのは,当時としては優れてSF的な発想で,ただ見えぬままでは映画にならないため,電磁バリアーにかかってレーザー銃の一斉射撃を受けるくだりで,その赤い火花に縁取られて肉食獣のごとき姿が浮かび上がる光景(ディズニー・プロから出向したアニメーター,I.G.リースとJ.メドーが担当)は大迫力である。…
※「禁断の惑星」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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