改訂新版 世界大百科事典 「種数」の意味・わかりやすい解説
種数 (しゅすう)
genus
粘土の塊の表面は球面と同相であるが,それに指を通してn個の穴を開ければ(図1),その表面は浮輪の形をした曲面(トーラス)をn個連結した曲面(図2)と同相になる。向きがつけられる閉曲面は球面かまたはこれらの曲面のいずれかに同相で,穴の個数が異なれば同相にならない。このように穴の個数は,向きがつけられる閉曲面を位相的に完全に分類するたいせつな数で,向きがつけられる閉曲面の種数,または示性数と呼ばれている。円板において,その周上の中心に関して対称な2点のおのおのをはり合わせたときにできる曲面を射影平面という。向きがつけられない閉曲面は射影平面をn個連結したもののいずれかに同相で,nが異なれば同相とならない。このnを向きがつけられない閉曲面の種数という。例えば,クラインの瓶の種数は2である(図3)。多面体の頂点,辺,面の個数をa0,a1,a2とするとき,a0-a1+a2をオイラー標数という。この数は,多面体が種数nの向きがつけられる閉曲面のときはつねに2-2nとなり,種数nの向きがつけられない閉曲面のときはつねに2-nとなる。
執筆者:中岡 稔
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報