改訂新版 世界大百科事典 「積率」の意味・わかりやすい解説
積率 (せきりつ)
moment
モーメントともいう。統計学で度数分布や確率分布の散布の大きさを測り,分布を特徴づけるのに役だつ。変量X(例えば身長)を観測して度数分布(x1,f1),(x2,f2),……,(xn,fn)が得られたとき,ある一定の値aからの度数分布の変動の大きさを測るのに,rを正の整数として,なる量を考え,これをaのまわりのr次の積率と呼ぶ。a=0のときは単にr次の積率という。とくに一次の積率を平均値といい,平均値のまわりの二次の積率を分散という。これらをそれぞれx,s2とかく。ただし,とおく。分散の平方根sを標準偏差という。aのまわりの二次の積率がもっとも小さくなるのはa=xのときである。標準偏差sは標本値のちらばりの程度を表すもので,sが小さいほど標本値が平均値xの近くに集まっている。二次以上の高次の積率は,分布のゆがみやとがりの程度を表すのに使われる。
執筆者:野本 久夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報