標準偏差は、一群の観測値または測定値に対して使用される場合と、確率変数に対して使用される場合の二通りがある。
(1)観測値または測定値の標準偏差 n人のクラスであるテストが行われ、各人の点数をx1、x2、……、xnとする。算術平均をx-で表す。
このとき
を分散といい、分散の平方根を標準偏差という。標準偏差の値が小さいときは、n個の点数は一つの値の近くに固まった形となる。極端な場合として標準偏差が0であれば、各xiはすべて同じ値となる。また標準偏差の値が大きいとき、点数は全体として散らばった形となる。すなわち、標準偏差は一群の観測値または測定値の散らばりの度合いを表すものである。
(2)確率変数の標準偏差 Xを離散型確率変数とする。すなわち、Xのとりうる値がx1、x2、……であって、Xがxiという値をとる確率piについてpiの総和は1であるとする。
このとき
を確率変数Xの平均値という。また
を確率変数Xの分散といい、分散の平方根を確率変数Xの標準偏差という。
次にXが連続型の確率変数の場合を考えよう。いま連続関数f(x)があって
を満たし、Xの値が区間Jに属する確率が
で与えられるとき
を確率変数Xの平均値という。また
を確率変数Xの分散といい、分散の平方根を確率変数Xの標準偏差という。
次に一般の確率変数Xについて考える。Xの分布関数をF(x)とするとき
を確率変数Xの平均値という。また
を確率変数Xの分散といい、分散の平方根を確率変数Xの標準偏差という。
[古屋 茂]
確率・統計用語。その数値を表すのにσとかSDなどの記号が用いられる。資料x1,x2,……,xnが得られたときが平均値,が分散で,Vの平方根が標準偏差σである。このσは資料が平均値mのまわりにどの程度の広がりで分布しているかを示す一つの尺度である。チェビシェフの不等式によれば,資料が平均値からtσ以上離れている確率は1/t2以下である。とくに分布の形がわかっている場合はもっと詳しいことが知られる。例えば正規分布に近いとき,平均値から1.95σ以上離れているものは約5%にすぎない。確率変数についても同じ趣旨で標準偏差が定義できる。Xの平均値E(X)をmとしてE{(X-m)2}の平方根がXの標準偏差である。Xに対しX′=(X-m)/σをとれば,平均値が0,標準偏差が1のものに規格化される。それは尺度を統一して取り扱いたいとき,あるいは多くの確率変数を比較するときなど好つごうとなる。
→偏差値
執筆者:飛田 武幸
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…離散形の場合なら平均値mは, で,分散σ2は, で与えられる。分散の平方根σ(>0)が標準偏差で散らばりの程度を表す。連続形のときも平均値,分散が類似した式で定義される。…
…また多くの場合,平均値を中心にして過不足は同程度の割合で起こるとしてよいのでφ(-x)=φ(x)と仮定する。この分布の二次のモーメント,の平方根,すなわち標準偏差σは誤差論では平均誤差と呼ばれる。そしてその逆数1/σは精密さを表す。…
…統計データのばらつきの度合を表す量のことを一般に散布度と呼び,分散,標準偏差,不偏分散,平均偏差,データの範囲などがある。もっともよく用いられるのは,分散,標準偏差である。…
…代表値の近くに密集していることもあれば,両側に幅広く散らばっていることもある。この分散度を表すのに分散V,標準偏差σ,平均偏差などがある。それらはいずれもXiととの差,すなわち偏差Xi-から求められ,が平均偏差である。…
…ただし,とおく。分散の平方根sを標準偏差という。aのまわりの二次の積率がもっとも小さくなるのはa=のときである。…
※「標準偏差」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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