改訂新版 世界大百科事典 「竹売」の意味・わかりやすい解説
竹売 (たけうり)
中世における商人の一種。《三十二番職人歌合》にその名がみえるが,室町時代に商品流通が盛んになるにしたがって,農民が竹売に進出する例がみられた。京都近郊の深草と木幡には,山科家に属する竹供御人(たけくごにん)がいたが,1481年(文明13),両者はその利権について争い〈伏見(深草)ハひさしき供御人,小幡ハちかし〉といわれているのは,木幡が深草より後に竹売に進出したことを示している。山科家にはこのほか,差別をうけた散所の一つである〈竹うり散所者〉が所属していた。また竹売から派生して竹子供御人も中世に現れ,先の木幡には山科家に属する10人の竹子供御人が免許札を与えられている。こうしたことから,中世の竹売は農民の副業的な意味をもって営まれていたものと思われる。
執筆者:川嶋 将生
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報