筆記小説(読み)ひっきしょうせつ(その他表記)Bi-ji xiao-shuo

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「筆記小説」の意味・わかりやすい解説

筆記小説
ひっきしょうせつ
Bi-ji xiao-shuo

中国,文語体の散文形式の一つ。「筆記」とは体系的な著述ではなく,おりおりに書き記したいわば随筆というほどの意味で,たとえば宋の陸游の『老学庵筆記』,清の紀いん (きいん) の『閲微草堂筆記』など,著者がその書名につけることが多い言葉であり,また「小説」というのも「小さな話」というほどの意味である。すなわち,内容がフィクションであるかどうかには関係なく,「雑多な内容をもつ,随筆風の文語体の短編を集めたもの」と考えられる。この用語が一般化したのは民国初に上海の進歩書局が『筆記小説大観』という叢書を出版してからであるが,その定義は必ずしも確定してはいない。

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世界大百科事典(旧版)内の筆記小説の言及

【随筆】より

…確かに中国にはエッセーと呼ぶにふさわしい作品はきわめて少ないし,〈随筆〉と名のつく代表的な書《容斎随筆》でさえ,その内容は学問的考証で占められている。古来,雑記,雑説,雑録,雑志,雑識とか,漫録,漫筆,漫志,漫抄とか,筆記,筆談,筆乗,叢談,野語,間話などと銘打った,一般に〈筆記小説〉と総称されるものは,大部分は古今の瑣細な事がらや見聞の記録と読書余録的な記述と考証で占められ,著者自身による人生観照や文明批評が語られることは稀である。しかし中国人にとっては,こういう個々の事実や経験の記録そのものが,いわば随筆として享受されたのであり,現在でもそうである。…

※「筆記小説」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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