閲微草堂筆記(読み)えつびそうどうひっき(英語表記)Yue-weicao-tang bi-ji

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「閲微草堂筆記」の意味・わかりやすい解説

閲微草堂筆記
えつびそうどうひっき
Yue-weicao-tang bi-ji

中国,清の奇談集。紀いんの著。 24巻。嘉慶5 (1800) 年刊。『 灤陽 (らんよう) 消夏録』『如是我聞』『槐西雑志』『姑妄聴之 (こもうちょうし) 』『 灤陽続録』の5種から成り,乾隆 54 (1789) 年から嘉慶3 (98) 年にかけて書かれたものを,門人の盛時彦 (せいじげん) が合刊したもの。閲微草堂は紀いん書斎の名。幽霊や狐狸怪談が主であるが,異国の物産や伝説,作者の追憶談なども含まれる。当時流行していた『聊斎志異 (りょうさいしい) 』が文体では六朝の志怪小説と唐の伝奇小説を,内容では見聞空想とをそれぞれ混用しているという不満が執筆の一つの動機であり,本書はいずれも前者に従って,典雅簡潔な文体で,市井の事件の見聞を記録するという態度をきびしく保って書かれている。文末につけられた各事件に対する評語にも,紀いんの深い学識と見識が示され,『聊斎志異』と並んで広く読まれ,かつては本書のほうが怪異小説の模範と考えられたこともあった。

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改訂新版 世界大百科事典 「閲微草堂筆記」の意味・わかりやすい解説

閲微草堂筆記 (えつびそうどうひっき)
Yuè wēi cǎo táng bǐ jì

中国,清の紀昀きいん)の著。文言の志怪小説。門人が紀昀の校閲をうけて1800年(嘉慶5)に《灤陽銷夏録(らんようしようかろく)》以下5種を合刊した。すでに《四庫全書編纂の大業を終えた一代の碩学の筆のすさびに成るが,清初の一書生,蒲松齢の《聊斎志異》が流行するさなかへ,〈小説〉は勧善に資し,その本義は見聞を語るにあり,空想を廃すべしとの主張を厳格に実践し,市井の事件も怪談奇談も,いかに典雅で簡潔な文章をもって記しうるかを示している。なお閲微草堂は紀昀の書斎の名。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「閲微草堂筆記」の意味・わかりやすい解説

閲微草堂筆記
えつびそうどうひっき

中国、清(しん)代の学者紀昀(きいん)が集めた怪奇譚(かいきたん)集。24巻。四庫全書総纂(そうさん)官の仕事を終えた紀昀が、公務の余暇に自らの見聞に基づいて珍奇な話を書き記したもの。「灤陽消夏録(らんようしょうかろく)」6巻(1789)、「如是我聞(じょぜがもん)」4巻(1791)、「槐西雑志(かいせいざっし)」4巻(1792)、「姑妄聴之(こもうちょうし)」4巻(1793)、「灤陽続録」6巻(1798)と別々に刊行されたのを、1800年に合刻した際この書名がつけられた。「閲微草堂」は紀昀の書斎名。端正な文語で書かれ、中国志怪(しかい)小説の最後を飾るもの。

[佐藤 保]

『前野直彬訳『中国古典文学大系42 閲微草堂筆記他』(1971・平凡社)』

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百科事典マイペディア 「閲微草堂筆記」の意味・わかりやすい解説

閲微草堂筆記【えつびそうどうひっき】

中国,清代の文語体短編奇談集。《四庫全書》編纂を終えた紀【いん】(きいん)〔1724-1805〕の著。門人の盛時彦が1編に編集。狐鬼幽怪の怪談・奇談を淡々と記す。《聊斎志異(りょうさいしい)》とならんで広く読まれた。

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