改訂新版 世界大百科事典 「筋性防御」の意味・わかりやすい解説
筋性防御 (きんせいぼうぎょ)
muscular rigidity
腹腔内になんらかの急性炎症が起こると,反射的にその部分の腹壁が緊張して硬くなり,外から触れられるようになる。たとえば急性虫垂炎の場合,この症状は右下腹部に現れる。これを筋性防御といい,患部を防衛するという意味から名づけられた。この現象は炎症によって刺激された腹膜と同一の脊髄神経の支配領域の腹壁筋肉が反射的に緊張するもので,この緊張の強さは刺激の強さとほぼ一致する。腹腔内の炎症が腹膜に及ばないときには,この症状は現れない。また肥満体の人では本症状の確認が不明りょうのことがある。そのほか,高齢者,乳幼児や経産婦人では緊張亢進が明らかでないことがある。急性虫垂炎のほか,急性胆囊炎や急性膵炎などで認められ,診断の一助となる。筋性防御のみられる急性虫垂炎は開腹手術が必要である。胃・十二指腸潰瘍の穿孔(せんこう)による汎発性腹膜炎では腹部全体が板状に硬くなる。しかし腹膜炎でも,晩期になるとこの症状は消失する。
執筆者:立川 勲
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