紗那(読み)しゃな

日本大百科全書(ニッポニカ) 「紗那」の意味・わかりやすい解説

紗那
しゃな

北海道東部、択捉島(えとろふとう)の中心村落。同島中部北西岸にあり、オホーツク海に面する紗那湾岸の海岸段丘上に位置する。紗那川の河口にあたり、良港をなす。1935年(昭和10)ごろには人口2300を超えたが、1942年では993。第二次世界大戦前には村役場、無電局、測候所、全千島水産会、缶詰工場があり、紗那川上流に大規模なサケ・マス孵化(ふか)場が置かれていた。近海からはサケ、マス、タラ、クジラ、海藻類がとれ、夏には漁場が開かれ、多くの繰り込み漁夫でにぎわった。

 1800年(寛政12)幕府は近藤重蔵(じゅうぞう)に命じて高田屋嘉兵衛(かへえ)に択捉島を開発させ、紗那に会所を置き、幕吏や津軽・南部藩兵が守備したが、1807年(文化4)ロシア人が会所を襲い焼いた。1885年(明治18)紗那郡役所が置かれ、1897年から6年間は紗那支庁所在地であった。その後、根室支庁(現、根室振興局)管内の紗那郡紗那村を構成して終戦に至り、形式上は現在も存続するが、戦後は日本の施政権が及ばずソ連が支配し、ソ連解体後はロシア連邦が支配、サハリン州に所属せしめてクリリスクКурильскとよんでいる。

渡辺一夫

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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