改訂新版 世界大百科事典 「経済要略」の意味・わかりやすい解説
経済要略 (けいざいようりゃく)
江戸後期の経世家佐藤信淵の経済論の成立期における,その知識,思想体系の全貌を知る書。1822年(文政5)成立。上下2巻。大部の著書《経済要録》(1827成立)に先行し,諸侯のとるべき政策,彼の宇宙論,天文地理から農学・農政論,鉱山学,交易流通論にいたるまでの信淵の思想の体系的整理が行われている。序および総論第一,創業第一,開物第二,富国第三,垂統第四から成る。〈経済トハ,国土ヲ経営シ,物産ヲ開発シ,部内ヲ富豊ニシ,万民ヲ済救スルノ謂ナリ〉に始まる。創業編では君侯が財用を節約して国家万民のために用いよと説き,開物編では,化育する品物を大別して土石・草木・活物類とし,気候・土性に即して生産増強を行うべしと述べ,富国編では,国を富ますには財貨流通をよくし,奢侈をつつしむことを説き,垂統編では,資金調達,生産,流通の官府による統制,その機関等国家観を示す。《佐藤家学全集》中巻所収。
執筆者:塚谷 晃弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報