日本大百科全書(ニッポニカ) 「網膜脈絡膜萎縮症」の意味・わかりやすい解説
網膜脈絡膜萎縮症
もうまくみゃくらくまくいしゅくしょう
網膜や脈絡膜の炎症などのあとにおこってくるものと、なんら原因なしに発病してくる原発性のものとがあり、高度近視に伴っておこるものもある。
原発性網膜脈絡膜萎縮症には、脈絡膜全萎縮症、脳回転状網膜脈絡膜萎縮症、乳頭周囲脈絡膜萎縮症、中心性脈絡膜萎縮症などの病型がある。このうち、脈絡膜全萎縮症はX染色体潜性遺伝性疾患で、男性に発病する。また、脳回転状網膜脈絡膜萎縮症は血中のオルニチン酸という物質の増加が原因であることが明らかにされ、ビタミンB6で治療できる可能性が検討されている。このように、いろいろな萎縮症のうちでこの疾患は発病の仕組みが解明されたものであり、他の萎縮症の原因解明の手掛りとなるのではないかと期待されている。
なお、中心性脈絡膜萎縮症は眼底の中心部である黄斑(おうはん)に始まる萎縮症であり、中年になって発病することが多く、遺伝は常染色体顕性遺伝である。この疾患は黄斑に始まり中心視力が低下してくるので、黄斑ジストロフィーの一つの病型とされており、中年以後に発病し高年齢になると著しく視力が低下するので、加齢黄斑変性症の代表的な病気の一つに数えられている。
[松井瑞夫]