改訂新版 世界大百科事典 「線形形式」の意味・わかりやすい解説
線形形式 (せんけいけいしき)
linear form
体K上の線形空間VからKへの線形写像のことを線形形式,または一次形式という。Vが有限次元のとき,Vの基底e1,……,enを取る。fが線形形式ならば,f(ei)=αi∈Kであり,Vの元x=x1e1+……+xnenについて,f(x)=x1f(e1)+……+xnf(en)=α1x1+……+αnxnとなる。したがって,fはK上のn変数一次斉次式で表される。この考えを一般化して,K上の線形空間V1,……,Vrの直積V1×……×VrからKへの写像fで,各iについて,f(a1,……,ai-1,αai+βbi,ai+1,……,ar)=αf(a1,……,ai-1,ai,ai+1,……,an)+βf(a1,……,ai-1,ai,ai+1,……,an)が成立するものを多重線形形式という。特にr=2を双一次形式という。上と同様にV1,……,Vrの基底を固定すれば,fは{xij|1≦i≦r,1≦j≦ni=dim Vi}を変数とする多項式F(……,xij,……)であって,各iごとにについて一次斉次のもので表される。V上の線形形式f,gとKの元α,βについて,(αf+βg)(x)=αf(x)+βg(x)で定義すれば,αf+βgも線形形式である。この演算でV上の線形形式全体V*はK上の線形空間になる。Vが有限次元ならば,V*もそうで,dim V=dim V*となる。V*はVの双対空間と呼ばれる。これらの概念は環の上の加群にも一般化されるが,その場合はだいぶ複雑になる。
執筆者:丸山 正樹
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報