線形空間(読み)センケイクウカン(その他表記)linear space

関連語 丸山 名詞

精選版 日本国語大辞典 「線形空間」の意味・読み・例文・類語

せんけい‐くうかん【線形空間】

  1. 〘 名詞 〙 数学で、Kが体、Vが集合のとき、Vの元の間に加法が、Kの元とVの元との間に乗法が定義されていて、次の七つの条件が満たされるならば、Vは体Kの上の線形空間であるという(ただし、a、b、cはVの元、α、βはKの元、1はKの単位元である)。a+b=b+a (a+b)+c=a+(b+c) 任意のa、bに対して a+x=b であるVの元xがただ一つ存在する。1・a=a α(βa)=(αβ)a α(a+b)=αa+αb (α+β)a=αa+βa このとき、Vの元をベクトル、Kの元をスカラーとよぶ。ベクトル空間。

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改訂新版 世界大百科事典 「線形空間」の意味・わかりやすい解説

線形空間 (せんけいくうかん)
linear space

空間のベクトル abとスカラーαには,和abとスカラー倍αaが定義されて,次の性質をもつ。ベクトルの和について,ベクトルの全体はアーベル群可換群)をなす。すなわち(1)abba,(2)(ab)+ca+(bc),(3)すべてのベクトルaについてa+0=aとなるベクトル0が存在する,(4)各ベクトル aについてab=0となるbが存在する。さらにスカラー倍について,(5)(αβ)a=α(βa),(6)1aa,(7)(α+β)a=αa+βa,(8)α(ab)=αa+αbが成立する。空間のベクトルのほかにも,例えば実数係数の一変数多項式全体にも和が定まっており,定数倍をスカラー倍とすれば,上記(1)~(8)の性質をもつ。これらを一般化して,次のように線形空間を定義する。集合Vと体Kが与えられて,次の条件(9)~(10)を満たすとき,VK上の線形空間またはベクトル空間vector spaceであるといい,Vの元をベクトル,Kの元をスカラーと呼ぶ。(9)Vのかってな2元abについてその和abが定まり,Kの任意の元αとVの任意の元aについてVの元αaaのスカラー倍)がきまる,(10)この和について,Vはアーベル群になり,スカラー倍について,上記(5)~(8)が成立する。線形空間は上記の例以外にも数学のいたるところに現れる。例えば,Dが線形微分作用素ならば,Du=0となる滑らかな実数値関数全体,すなわち解の空間は実数体上のベクトル空間になる。線形空間Vの部分集合Wについて,[abWαβkαa+βbW]が成立すれば,WVの和,スカラー倍で線形空間になる。このとき,WV線形部分空間であるという。
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