日本大百科全書(ニッポニカ) 「義寂」の意味・わかりやすい解説
義寂
ぎじゃく
(919―987)
中国、五代~宋(そう)の天台宗の僧。浄光大師(じょうこうだいし)。螺渓尊者(らけいそんじゃ)と号す。温州永嘉(おんしゅうえいが)(浙江(せっこう)省温州府永嘉県)の人。天台山国清寺(こくせいじ)にて清竦(せいしょう)法師より天台を学び、のち、呉越(ごえつ)の忠懿(ちゅうい)王銭弘俶(せんこうしゅく)(在位948~978)に迎えられて伝法院に住した。安史の乱(755~763)、会昌(かいしょう)の廃仏(845)などのため、当時の天台宗の典籍はほとんど散逸してしまったので、義寂は日本や高麗(こうらい)にまで使者を遣わして図書の収集に努めた。高麗からは諦観(たいかん)が請に応じて赴いた。天台中興の祖と称され、多くの弟子を養ったが、とくに弟子の義通(ぎつう)(927―988)の系統からのちに知礼(ちれい)が現れ、天台の正統となった。
[末木文美士 2017年1月19日]