ほう‐し ホフ‥【法師】
〘名〙
① 仏語。
出家して仏道を修行し、仏法に精通して、
衆生を正しく導く師となる者。
※円照上人行状(1302)「通二悟性相一、名為二恵学一、阿毗達摩所似二精祥一、名二之法師一」 〔法華経‐序品〕
※
書紀(720)崇峻元年是歳(図書寮本訓)「
僧(ホウシ)恵

・令斤・恵

等を遣して仏の舎利を献る」
※
徒然草(1331頃)五二「仁和寺にある法師、年寄るまで、石清水を拝まざりければ」
③ (昔、男の子は
頭髪をそっていたところからいう) 男の子。坊
(ぼう)。
※俳諧・誹諧之連歌(飛梅千句)(1540)京何第九「少人のいにしへ今のひとりごと いつか
ほうしのうかひ出まし」
④ 俗人の法体した者。特に琴、
三味線の師匠をし、また
遊興の相手などする
座頭。
※浮世草子・好色二代男(1684)六「夢松、昼太夫と、替名呼て、皆六十余の法師(ホウシ)也」
⑥ ある語に添えて「人」の意を表わす語。多く、「
ぼうし」と濁る。「一寸法師」「
影法師」など。
のり‐し【法師】
※書紀(720)孝徳即位前(北野本訓)「
沙門(ノリシ)(〈別訓〉のりのし)旻法師
(みんほうし)、
高向の
史(ふみひと)玄理を以て、国の
博士と為」
ほっ‐し【法師】
※熱田本平家(13C前)四「大衆已下の法師
(ほッし)輩(ばら)」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
法師
ほうし
僧侶(そうりょ)の総称として用いられるけれども、古くは僧位として伝燈(でんとう)大法師位、伝燈法師位、修行大法師位、修行法師位の四階があった。すなわち、もとは敬称だったのである。仏法の師であって、経を持ち、読み、誦(ず)し、解説し、書写する師を五種法師といった。しかし一般僧侶が上人(しょうにん)とか禅師(ぜんじ)、論師、律師などの敬称でよばれるようになると、下位の僧や山伏的堂衆(どうしゅ)だけを法師とよび、山法師(比叡山(ひえいざん))、寺法師(園城(おんじょう)寺)、奈良法師(興福寺)は僧兵の別称となった。
[五来 重]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
ほう‐し〔ホフ‐〕【法師】
1 仏法によく通じ、人々を導く師となる者。また一般に、僧。出家。ほっし。
2 俗人で僧形をした者。「琵琶法師」「田楽法師」
3 《昔、男の子は頭髪をそっていたところから》男の子。
「いつかまた―が母にあひたけの、乱れ心や狂ふらん」〈虎明狂・法師が母〉
4 名詞に添えて「人」の意を表す。多く「ぼうし」と濁る。「一寸法師」「影法師」
[類語]僧・僧侶・坊主・坊さん・御坊・お寺様・僧家・沙門・出家・比丘・僧徒・桑門・和尚・住職・住持・方丈・入道・雲水・旅僧
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
ほうし【法師】
狭義にはもっぱら仏法を演説する師のことを指すが,広義には出家して衆生を導く僧のことをいう。〈ほっし〉〈のりのし〉とも読む。《日本書紀》は僧,沙門,大徳などを〈ホウシ〉と訓じているので,早くから国語化して用いられたものと思われる。律令時代には伝灯大法師位,伝灯法師位のように僧位の名称ともなったが,一般には僧侶を意味し,延暦寺の僧を山法師,園城(おんじよう)寺の僧を寺法師,興福寺の僧を奈良法師とも呼ぶ。
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
世界大百科事典内の法師の言及
【僧】より
…比丘とは乞食者(パーリ語のビックbhikkhu)の意味で,仏教の修行者が元来,出家・遊行を旨とし,托鉢(たくはつ)すなわち鉢を持って食を乞うて生活する沙門(しやもん)であったことに由来する。修行者はまた,教団内の役割に応じて,上座(大衆を統率する),維那(寺務をつかさどる),阿闍梨(あじやり)(大衆の教育に当たる),和尚(弟子を養育する)等とよばれ,あるいは法師(在家信者へ説法。布教者),瑜伽師(ゆがし)(禅師。…
【僧】より
…比丘とは乞食者(パーリ語のビックbhikkhu)の意味で,仏教の修行者が元来,出家・遊行を旨とし,托鉢(たくはつ)すなわち鉢を持って食を乞うて生活する沙門(しやもん)であったことに由来する。修行者はまた,教団内の役割に応じて,上座(大衆を統率する),維那(寺務をつかさどる),阿闍梨(あじやり)(大衆の教育に当たる),和尚(弟子を養育する)等とよばれ,あるいは法師(在家信者へ説法。布教者),瑜伽師(ゆがし)(禅師。…
※「法師」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報