肺動脈弁狭窄症

内科学 第10版 「肺動脈弁狭窄症」の解説

肺動脈弁狭窄症(後天性弁膜症)

概念
 右室流出路の狭窄により血流が障害された状態.
分類
 弁上部狭窄,弁性狭窄,弁下部(漏斗部)狭窄.
病因
 先天性心疾患に合併するものがほとんどで後天性はまれである.
疫学
 95%が先天性とされ,最も多い心奇形の1つ.後天性ではリウマチ性弁膜症や感染性心内膜炎,カルチノイド症候群にみられる.
病理
 胎生期に肺動脈弁の三尖弁が分割せずに発育すると弁性狭窄となり,右室漏斗部室上稜の吸収が不十分な場合は漏斗部狭窄になる.
病態
 右室-肺動脈圧較差を生じる.右室圧負荷から右心不全に至る.
臨床症状
1)自覚症状:
重症でなければ成人に達するまで無症状に経過することが多い.成人して労作時呼吸困難,易疲労感が出現する.重症例では幼児期から呼吸困難があり,労作時呼吸困難,胸痛,失神発作がみられる.
2)他覚症状:
通常チアノーゼは認めない.
検査成績
 心エコー図連続波ドプラ法により肺動脈弁口最大速度を計測し,ΔP=4V2の式から右室-肺動脈圧較差を算出することにより重症度の判定に用いることができる.
診断
 肺動脈領域における収縮期駆出性雑音を聴取し,右室肥大がみられる.心エコー図で肺動脈弁口の狭小化,収縮期の弁のドーム形成が認められる.心臓血管造影法により狭窄を確認することもできる.
鑑別診断
 肺高血圧,拡張型心筋症,肥大型心筋症など.
合併症
 先天性の場合は,ほかの合併心奇形の存在に留意する必要がある.
経過・予後
 軽症のものは経過観察で予後はよい.
治療
 重症度に応じて外科手術を要する.弁性狭窄に対してはバルーンカテーテルを用いた弁切開術が行われることがある.[兵頭永一・吉川純一]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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