脱掛(読み)ぬぎかける

精選版 日本国語大辞典 「脱掛」の意味・読み・例文・類語

ぬぎ‐か・ける【脱掛】

〘他カ下一〙 ぬぎか・く 〘他カ下二〙 (「ぬきかける」とも)
衣服を脱いで、ものに掛ける。
古今(905‐914)秋上・二四一「主知らぬ香こそ匂へれ秋の野にたがぬぎかけし藤袴ぞも〈素性〉」
② 衣服を脱いで、賞として人の肩に掛けてやる。衣服を脱いで祿として人に与える。
※宇津保(970‐999頃)春日詣「みな人も衣ぬぎかけ松風のひびき知りたる人やあるとぞ」
上衣などを、肩のあたりまで脱ぎすべらせて着る。肩脱ぎをする。また、抜き襟にする。
※宇津保(970‐999頃)国譲中「綾の掻練単襲、二藍の織物の衣ぬぎかけておはするを、大殿見奉り給」
④ 脱ぎはじめて途中までくる。
日葡辞書(1603‐04)「Nuguicaqe, uru, eta(ヌギカクル)〈訳〉衣服を脱ぎ下に垂らし、なかば裸になる」

ぬぎ‐かけ【脱掛】

〘名〙
着物をなかば脱いで肩のあたりまであらわすこと。肩脱ぎ。また、着物の後襟を後に押し下げて着ること。〔日葡辞書(1603‐04)〕
浮世草子・好色一代男(1682)五「末座にまだ脇あけの女、さのみかしこ顔もせず、ゆたかに脱懸(ヌギカケ)して」
能装束の着方の一つ。上着の唐織・素襖などの右片袖を脱いで後に垂らす着方。狂女船頭などに用いる。ぬぎさげ。
八帖花伝書(1573‐92)六「物狂の出立。びゃくゑにて、ぬぎかけたるべし」
③ 脱ぐ途中であること。

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