化学辞典 第2版 「腐食抑制剤」の解説
腐食抑制剤
フショクヨクセイザイ
corrosion inhibitor
インヒビターともいう.少量の添加により金属の腐食を抑制する物質.腐食はアノード反応(金属の溶解)
M→ Mn+ + ne
とカソード反応(酸化体の還元;
2H+ + 2e→ H2,O2 + 2H2O + 4e→4OH-
など)の同時反応とみなせるので,そのどちらか一方あるいは両方を阻害することにより抑制することができる.
(1)無機アノードインヒビター:おもに中性溶液で用いられ,金属の不動態化を促進するもので,必然的に電位はアノード側(貴側)へずれる.例;NaOH,Na2CO3,Na2Cr2O7,NaNO2,Na2O・SiO2,水ガラス(Na2O・4SiO2・xH2O)など.
(2)無機カソードインヒビター:カソード反応を抑制するもので,たとえば,As,Sb,Hgの塩類は酸性水溶液中で水素発生反応を阻害し,腐食を抑制する.
(3)有機インヒビター:一種の界面活性剤で金属表面に吸着し,腐食を抑制する.例;トルイジン,2-ナフチルアミン,ナフトキノリン,チオ尿素,トリエタノールアミン,オレイン酸ナトリウム,安息香酸ナトリウムなど.
(4)気相抑制剤(vapor phase inhibitor:V.P.I.):昇華性の防錆(せい)剤で密閉容器中に少量入れるか,あるいはこれを塗った防錆紙で包装することにより金属表面に吸着し防錆効果を示す.例;ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト[(C6H11)2NH2]NO2.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報