チオ尿素(読み)ちおにょうそ(英語表記)thiourea

日本大百科全書(ニッポニカ) 「チオ尿素」の意味・わかりやすい解説

チオ尿素
ちおにょうそ
thiourea

チオ炭酸のジアミド、あるいは尿素の酸素を硫黄(いおう)で置換した(チオは硫黄を示す接頭語で、チオ尿素の名はこのことに由来する)とみなすことができる化合物。チオカルバミドともいう。シアナミドH2NCNと硫化水素H2Sを反応させるか、あるいはチオシアン酸アンモニウムNH4SCNを170~180℃に加熱して異性化させて合成される。無色の結晶。水、エタノールエチルアルコール)にはよく溶けるが、エーテルにはほとんど溶けない。水溶液は中性である。金属塩と錯体をつくる。酸またはアルカリ加水分解すると、アンモニア、硫化水素および二酸化炭素に分解する。ホルムアルデヒド縮合してチオ尿素樹脂ユリア樹脂)をつくる。染料や医薬の原料として用いられるほか、分析化学では金属の比色定量および沈殿分離用の試薬として利用される。強誘電体である。

[務台 潔]


チオ尿素(データノート)
ちおにょうそでーたのーと

チオ尿素
  NH2
  |
  CS
  |
  NH2

 化学式 CH4N2S
 分子量 76.1
 融点  180℃
 沸点  (分解)
 比重  1.406

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「チオ尿素」の意味・わかりやすい解説

チオ尿素
チオにょうそ
thiourea

チオカルバミド,チオウレアともいう。化学式 (H2N)2CS 。チオ尿素樹脂や有機合成原料として用いられる。針状晶,融点 180℃。石灰窒素泥中で,硫化水素を付加させて工業的に生産される。ホルムアルデヒドとの縮合により尿素樹脂を製造するほか,分析試薬としてビスマスタリウムなどの定性定量に用いられる。

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