最新 地学事典 「腹足網」の解説
ふくそくこう
腹足網
学◆Gastropoda
軟体動物門のうち巻貝類を指し,腹足類あるいは巻貝類と総称。軟体動物門の中で科や種の数が最も多い。多くは海中で底生生活を送るが,浮遊生活をするもの,汽水・淡水域で生活するものもある。軟体動物として唯一,陸上にも生息する。多くは右巻きの螺旋状の殻をもつが,二枚の殻をもつもの,殻を失ったものなどもあり,形態は多様。少なくとも幼生期に一つの殻及び蓋をもつこと,幼生期に内臓塊が体の前後軸に対して90〜180度半時計回りに「捻れる(torsion)」(その後さらに「捻れ戻り」をするものもある)ことが,腹足綱の重要な特徴である。この「捻れ」の結果,軟体動物の他綱と異なり,外套腔が体の前方あるいは右方に位置する。現生種の分子系統解析や相同性を重視した形態再評価の進展により,1990年代以降,腹足綱の分類体系は大幅に変更された。腹足類を前鰓類・後鰓類・有肺類の3亜綱とする旧体系が今でも散見されるが,現在では始祖腹足亜類 Eogastropodaと正腹足類 Orthogastropodaの2亜綱とする体系,あるいはこれらを細分して笠型腹足類(Patellogastropoda)・古腹足類(Vetigastropoda)・アマオブネ形類(Neritimorpha)・新生腹足類(Caenogastropoda)・異鰓類(Heterobranchia)をそれぞれ亜綱とする体系へと改訂されている。腹足類はカンブリア紀Miaolingianに出現し,オルドビス紀に多様化。最初の陸上進出は石炭紀と考えられている。古生代前半の絶滅群は,軟体動物の他綱との系統関係はもとより,腹足類とみなし得るかどうか不明なものも多い。
執筆者:魚住 悟・鈴木 清一・芳賀 拓真
出典 平凡社「最新 地学事典」最新 地学事典について 情報

