膝行・躄(読み)いざる

精選版 日本国語大辞典 「膝行・躄」の意味・読み・例文・類語

い‐ざ・る ゐ‥【膝行・躄】

〘自ラ五(四)〙 (「居さる」の意。「居」はすわる、腰をおろす。「さる」は移動する)
① すわったままで移動する。ひざをついたり、しりを地につけたままの姿勢で進む。膝行(しっこう)する。
※宇津保(970‐999頃)楼上下「そちの君三尺の几帳ひきそへていざりいでたり」
たまきはる(1219)「御障子(さうじ)の御あとへいでさせおはしますとて、やをらいさりて」
② すわる。坐す。〔物類称呼(1775)〕
③ 船が、浅瀬船底をすらせながら、のろのろ進む。
※土左(935頃)承平五年二月九日「ふねをひきつつのぼれども、かはのみづなければ、ゐざりにのみぞゐざる」
④ 物が、置かれた場所からずれて動く。
※俳諧・崑山集(1651)五「むつき過春はいざるや夏木立
※俳諧・炭俵(1694)冬「干物日向(ひなた)の方へいざらせて〈利牛〉」

い‐ざり ゐ‥【膝行・躄】

〘名〙 (動詞「いざる(膝行)」の連用形名詞化)
① ひざやしりを地につけて、手を使って進むこと。膝行(しっこう)
※兼盛集(990頃)「あふことのかたゐざりする緑子のたたむ月にもあはじとやする」
② 足が不自由で、立って歩けない人をいった語。躄者(へきしゃ)
※虎明本狂言・三人片輪(室町末‐近世初)「まづたて、いやいざりでござる」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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