日本大百科全書(ニッポニカ) 「臨床薬理学」の意味・わかりやすい解説
臨床薬理学
りんしょうやくりがく
clinical pharmacology
薬理学の原理を踏まえて臨床における薬物の理論と実際について研究する学問をいう。従来の「実験動物における薬理学」に対応するものとして「人間における薬理学」をいい、その目的は薬物療法の科学性を確立し、合理的な薬物療法を研究することである。すなわち、患者の個人個人において、最適の薬物を選択し、最適の投与方法・投与量・投与間隔など投与計画をたて、薬物の有効性をいかに最大とし副作用をいかに少なくするかなどの情報を収集して体系化・理論化し、これらの情報を基に個々の患者の薬物療法の有用性を高めるための理論と方法を研究する学問である。
臨床薬理学の範囲は広く、多岐にわたっているが、その中心となる領域は次の三つに大別される。(1)人を対象とした人間薬理学human pharmacology(人体薬理学ともいう)、(2)人における薬物の吸収・分布・代謝・排泄(はいせつ)など薬物の生体内動態に関する研究を目的とする臨床薬物動態学、(3)臨床における薬物の有効性・安全性の評価、すなわち臨床薬物評価、の三つである。
[幸保文治]