改訂新版 世界大百科事典 「自来也説話」の意味・わかりやすい解説
自来也説話 (じらいやものがたり)
読本。感和亭鬼武(かんわていおにたけ)作,蹄斎北馬画。前編5巻6冊は1806年(文化3),後編5巻5冊は07年刊。中国の《古今説海》中の宋沈俶撰《諧史》,あるいは《類書纂要》巻二十一〈窃盗(せつとう)〉の条などに収められた盗賊我来也の説話に発想して,義賊の武勇仇討奇談に仕立てた伝奇小説。前編は霊薬西天艸(せいてんそう)を盗み携帯して不死身となった奸賊鹿野苑(ろくやおん)軍太夫を,義賊自来也(本名尾形周馬寛行)が,軍太夫に討たれた侍の遺児勇侶吉郎(いさみともきちろう)に助力して討たせる筋。後編は自来也が妙香山の異人から授かった蝦蟇(がま)の術で,主家の敵石堂家をねらうが,忠臣の計略と江ノ島弁天授与の石の法螺貝の奇特で術を破られ自滅する筋。1807年大坂で劇化されたものに《柵自来也談(やえむすびじらいやものがたり)》があり,また合巻《児雷也豪傑譚》はこの作に想を得ている。
執筆者:鈴木 重三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報