異人(読み)イジン

デジタル大辞泉 「異人」の意味・読み・例文・類語

い‐じん【異人】

異国の人。外国人。特に、西洋人をいう。
別の人。他の人。「同名異人
普通の人とはちがってすぐれた人。また、不思議な術を使う人。
旧家に寄寓してあるいた白石翁という―が」〈柳田・山の人生
[類語]外国人外人異邦人

こと‐ひと【異人】

別の人。ほかの人。
和歌やまとうた、あるじも客人まらうども―も言ひあへりけり」〈土佐

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精選版 日本国語大辞典 「異人」の意味・読み・例文・類語

い‐じん【異人】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 普通でない人。
    1. (イ) すぐれた才能、人格をもった人。偉人
      1. [初出の実例]「恵心弟子寛印供奉。異人也」(出典:臥雲日件録‐文正二年(1467)二月二一日)
      2. [その他の文献]〔漢書‐公孫弘伝〕
    2. (ロ) この世の者とは思えない姿の人。奇怪な人。
      1. [初出の実例]「かの異人(イジン)呼留給ひ〈略〉『我はこれ地獄の主(あるじ)閻魔大王なり』」(出典:滑稽本・針の供養(1774)一)
    3. (ハ) いっぷう変わった性質の人。変人
      1. [初出の実例]「晩来狩野大炊助来云、此五六十日在大津。与京兆同所。件々彼三昧話之。実異人也」(出典:蔭凉軒日録‐長享二年(1488)五月七日)
    4. (ニ) 不思議な術を行なう人。仙人
      1. [初出の実例]「天台山にあって異人にあひてその術をつたふる」(出典:十善法語(1775)五)
      2. [その他の文献]〔郭璞‐江賦〕
  3. ほかの人。別人
    1. [初出の実例]「又別人をほめて、此人の行はよい、我も此様に同行すると云わば、説者かまいて其異事異人を文飾してようさうと云へぞ」(出典:史記抄(1477)一一)
    2. [その他の文献]〔春秋左伝‐襄公二年〕
  4. よその国の人。外人。外国人。
    1. [初出の実例]「亜墨利加船渡来、潟繋之節、異人共橋船にて若上陸之体にも見請候得者」(出典:日本財政経済史料‐七・経済・外国通商・外船外人取扱・安政元年(1854)四月)
    2. 「売主の異人(ヰジン)も日本がこれほどまで下りゃアしめへと思って積込んで来たところが」(出典:安愚楽鍋(1871‐72)〈仮名垣魯文〉三)
  5. ある社会の外側に住むもの。異界に住むもの。よそもの。狭義に、妖怪や鬼を指していうこともある。

異人の語誌

( 1 )もと「偉人」あるいは「奇怪な人」の意味であったが、次第に「外国の人」の意味で使われるようになった。
( 2 )開国の頃からは「外国人」も用いられたが、明治期の庶民層では「異人」が最もよく使われた。


こと‐ひと【異人】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 当事者あるいは話題になっている人とは)別の人。ほかの人。
    1. [初出の実例]「こと人よりはけうらなり、と思しける人の、かれに思しあはすれば」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
  3. 血縁などの関係のない人。他人。
    1. [初出の実例]「こと人のいはむやうに心えずおほせらると、中将にくむ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)帚木)

けな【異】 人(ひと)

  1. け(異)な者〔文明本節用集(室町中)〕
    1. [初出の実例]「腰元衆によふ思はれ、アアけな人じゃ、気の柔らかな男じゃと」(出典:浄瑠璃・相模入道千疋犬(1714)三)
  2. け(異)な者日葡辞書(1603‐04)〕

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百科事典マイペディア 「異人」の意味・わかりやすい解説

異人【いじん】

共同体の外部から,内部にいる〈われわれ〉に直に接触・交渉する形象。異人の存在があってこそ,共同体の人々は外との境界を画定して秩序ある世界像を結ぶことができる。伝承の中の異人は,福を運んでくる存在として歓迎されることもあれば(客人歓待),禍をもたらす存在として排除されたり犠牲に供されることもある。日本の民俗社会には,村々を漂泊する宗教者や芸能者を異人としてとらえた伝承が数多い。また多種多様な妖怪は想像上の異人といえる。共同体にとり,外部とはそこから神や王権が訪れる場所でもある。折口信夫は毎年春に異界から村を訪問する来訪神に注目した。また世界的にも,最初の王は外部から来た異人であったという伝承を持つ社会は少なくない。
→関連項目王権

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世界大百科事典(旧版)内の異人の言及

【外国人】より

…自国以外の国籍を有する者および無国籍者をふつう指す。外人,異国人,異邦人,異人などともいう。もともと畿内から見た外の人,地方の人を表す〈外国人(とつくにびと)〉が今日の用法に転用された。…

【漂泊民】より

…おのずとそれは,人間とその社会,歴史をとらえるさいの二つの対立した見方,立場にもなりうる。例えば定住的な農業民にとって,漂泊・遍歴する人々は異人,〈まれひと〉,神であるとともに乞食であり,定住民は畏敬と侮蔑,歓待と畏怖との混合した心態をもって漂泊民に接したといわれるが,逆に漂泊・遍歴する狩猟・漁労民,遊牧民,商人等にとって,定住民の社会は旅宿の場であるとともに,交易,ときに略奪の対象でもあった。また農業民にとっては田畠等の耕地が生活の基礎であったのに対し,狩猟・漁労民,商人等にとっては山野河海,等がその生活の舞台だったのである。…

【もてなし】より

…共同体内の,広義の隣人に対するもてなしは,時間的ずれはあるにしても,相互的に,互酬的原理(互酬)に従って行われるのがふつうである。そのため,共同体内にあって,一方的に飲食などの供与を受ける貧者は一人前の隣人とは認められず,いわば共同体内部の〈異人stranger〉という地位を占めることが多い。国家による福祉制度が確立する以前には,富者や宗教団体などによるこうした施しの原理がその役割を果たしていたわけであるが,そこでは与える側もまた,その行為を通じて社会的威信を高め,また贖罪(しよくざい)するとか,功徳を施すとかいった宗教的充足感を得ることができた。…

【来訪神】より

…1年に1度,時を定めて異界から人間の世界に来訪して,さまざまな行為をし,人々に歓待される神々を一般に来訪神とよぶ。来訪神はいわば異人の一種であり,〈まれびと〉である。われわれは,われわれの住む世界が自己(もしくは自己の仲間たち)と異人という二元的構成をとっているとみなしており,異人に対しては畏敬の観念をもつとともにこれを厚くもてなす異人歓待の観念が発達している。…

※「異人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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