船頭物(読み)せんどうもの

改訂新版 世界大百科事典 「船頭物」の意味・わかりやすい解説

船頭物 (せんどうもの)

歌舞伎舞踊の一系統。粋で威勢のいい船頭風姿舞踊化した作品群で,化政期(1804-30)以後変化(へんげ)舞踊(変化物)のなかに多く現れた。著名なものには次のような曲がある。(1)《大津絵船頭》 清元本名題《歌へす歌へす余波大津絵(かえすがえすおなごりおおつえ)》。作詞勝井源八。作曲初世清元斎兵衛。振付藤間大助(2世勘十郎),4世西川扇蔵。1826年(文政9)9月江戸中村座初演。2世関三十郎の帰坂名残として初演された五変化物の一つ。(2)《雷船頭》(《夕月船頭》とも) 常磐津。本名題《四季詠歳(しきのながめまるにいのとし)》。作詞3世並木五瓶。作曲5世岸沢式佐。振付4世西川扇蔵,松本五郎市。39年(天保10)3月江戸河原崎座初演。四変化物の一つで,初世沢村訥升(5世沢村宗十郎)の船頭が雷を相手に踊る。(3)《佃船頭(つくだせんどう)》 常磐津。本名題《花翫暦色所八景(はなごよみいろのしよわけ)》。作詞3世桜田治助。作曲5世岸沢式佐。1839年3月中村座初演。4世中村歌右衛門による四変化物の一つ。(4)《夕月船頭》 常磐津。本名題《四季写土佐画拙(しきをうつすとさえのふつつか)》。作詞西沢一鳳。作曲5世岸沢式佐。振付西川巳之助。2世藤間大助ほか。47年(弘化4)11月江戸市村座初演。4世市川小団次の七変化舞踊の一つで,前が乙姫を宙乗りで演じ,それから船頭に変わって踊った。(5)《蛸船頭》 清元。本名題《再爰歌舞伎花轢(またここにかぶきのはなだし)》。作詞2世桜田治助,作曲初世清元斎兵衛。1826年(文政9)6月市村座初演。3世坂東三津五郎が網打漁師で蛸を相手に踊った。三変化物の一つ。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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