色取・彩(読み)いろどり

精選版 日本国語大辞典 「色取・彩」の意味・読み・例文・類語

いろ‐どり【色取・彩】

〘名〙
① 物に美しく色をつけること。着色。彩色。
※狭衣物語(1069‐77頃か)一「御前には、中納言、中将などいふ人、絵かき、いろどりなどさせ給て」
② おもしろみや変化を求めて工夫を凝らすこと。または、表面をつくろい飾ること。また、そのもの。
※申楽談儀(1430)能の色どり「能に、色どりにて風情に成(なる)こと、心得べし」
③ 化粧。
※評判記・剥野老(1662)梅田門彌「なよやかにうるはしきかほばせは天のなせる有様なればかりなるいろどりをこととせずしてをのづからしろし」
④ (「いろとり」とも) 色事に巧みなこと。また、その人。
※浮世草子・猿源氏色芝居(1718)四「当世にむまれて色とりといはれうなら、かうなうてはと、御みとれあそばしたるふぜいに」
⑤ (「いろとり」とも) =いろじかけ(色仕掛)
浄瑠璃・苅萱桑門筑紫𨏍(1735)四「こりゃ色とりでは行くまいと、気相(きっさう)変へてけらけら笑ひ」
⑥ (上演に変化をつけるの意から) 演芸に変化をつけるもの。色物。転じて、高座の出番順を表わす寄席芸人用語。
※落語・素人洋食(1891)〈三代目三遊亭円遊〉「ヱーお堅い講談の間へ御色取りに御若輩のお笑ひを一席弁じ上ます」

いろ‐ど・る【色取・彩】

〘他ラ五(四)〙
① ものに色をつける。着色する。彩色する。
万葉(8C後)七・一三三九「鴨頭草(つきくさ)に衣色取(いろどり)摺らめども移ろふ色といふが苦しさ」
② 紅やおしろいなどを顔に塗って化粧する。
※源氏(1001‐14頃)総角額髪(ひたひがみ)をひきかけつつ、いろどりたる顔づくりをよくして」
③ いろいろな物をとり合わせて飾る。潤色する。
風姿花伝(1400‐02頃)七「十体(てい)の中(うち)を色どらば、百(もも)色にもなりぬべし」
④ 身なりを装い飾る。めかす。
※浄瑠璃・久米仙人吉野桜(1743)二「俄(にはか)に髪形繕ふて、いろどるの、いろどるの」
異性を意識して様子をつくる。色めいた身ぶりをする。気どる。
※浄瑠璃・曾我虎が磨(1711頃)傾城十番斬「肩に手をかけ歌祭文、鼻歌うたうて色どる所を」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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