改訂新版 世界大百科事典 「茨田池」の意味・わかりやすい解説
茨田池 (まんだのいけ)
古代,河内国茨田郡にあった池。東方の生駒山系北部に発する諸河川を水源としたとみられる。北西を流れる淀川がはんらんすると淀川左岸の地を浸すことになるので,これを防ぐため茨田堤が築かれたが,この築造に関する説話が《日本書紀》仁徳紀にみえる。これは大和朝廷が河内平野北部の開発に積極的であったことを物語る。この事業により耕地化が可能となったので,大和盆地における溜池灌漑の経験をもとに,茨田池の水利用によって茨田屯倉(みやけ)の経営に当たったのであろう。茨田池の周辺には秦氏,茨田氏などの渡来系氏族が多く居住しており,彼らのもつ進んだ技術が,造池や導水などの用水事業や農耕に役だてられたとみられる。茨田池は《日本書紀》皇極紀にその名がみえる以外は史料に現れず,池の機能をいつ消失したかは不明。その現在地は,大阪府寝屋川市西部の平池周辺地に比定されている。
執筆者:亀田 隆之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報