…その〈ギャグのソフィスティケーション〉の極致が,自然現象(雨,風,雪,嵐,岩くずれ等々)や暴走する交通機関(列車,自転車,船等々)やときには映画そのもの(カメラ,フィルム,スクリーン等々)といった不可抗力の対象との真に肉体的な格闘のイメージである。例えば,《荒武者キートン》(1923)では激流,《忍術キートン(キートンの探偵学入門)》(1924)では暴走自転車やスクリーンに映写中の映画,《キートンの栃面棒(セブン・チャンス)》(1925)では結婚を迫って襲ってくる花嫁の大群と崩れ落ちてくる岩石の群れ,《キートン将軍(キートンの大列車追跡)》(1926)では暴走機関車,《キートンの船長(キートンの蒸気船)》(1928)では暴風雨,《キートンのカメラマン》(1928)では撮影機等々といった相手と果てしない格闘を演ずる。それはまた,チャップリンのセンチメンタルな〈ヒューマニズム〉とは対照的な涙なきコメディであり,真に映像的コメディでもある。…
※「荒武者キートン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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