日本大百科全書(ニッポニカ) 「荒磯模様」の意味・わかりやすい解説
荒磯模様
ありそもよう
「ありそ」は本来「あらいそ」の略で、『万葉集』に「かからむとかねて知りせば越(こし)の海の荒磯の波も見せましものを」(大伴家持)とあるように、荒波の打ち寄せる磯(いそ)のこと。荒磯模様は、波間に飛躍する鯉(こい)を表した模様で、元来は染織の模様であり、室町時代に中国から渡来した名物裂(めいぶつぎれ)の一つ、荒磯裂の模様に由来する。これには金襴(きんらん)、銀襴、緞子(どんす)の3種があり、金襴、銀襴は紺地に金糸銀糸で鯉と怒濤(どとう)を表し、緞子は萌葱(もえぎ)地に波文を並列させ、その上に黄茶色の鯉を規則正しく並べたものである。またこの模様は江戸時代の磁器にもみられる。
[村元雄]