荒立(読み)あらだつ

精選版 日本国語大辞典 「荒立」の意味・読み・例文・類語

あら‐だ・つ【荒立】

[1] 〘自タ五(四)〙
① (波風、人の心などが)荒くなる。荒れ始める。
(イ) 風、波、天候などがおだやかでなくなる。
千五百番歌合(1202‐03頃)九〇七番「神無月夕日のかげになりにけりあらだちそむる沖つ白波宮内卿〉」
(ロ) 人の心がおだやかでなくなる。いらだつ。〔日葡辞書(1603‐04)〕
② 荒々しくふるまう。乱暴なことをする。
源氏(1001‐14頃)帚木「いとやはらかにのたまひて、鬼神(おにがみ)もあらだつまじきけはひなれば」
物事がまるく納まらず、ごたごたが表沙汰になる。
歌舞伎お染久松色読販(1813)序幕アコレ、殊あらだってはかへっていかが」
[2] 〘他タ下二〙 ⇒あらだてる(荒立)

あら‐だ・てる【荒立】

〘他タ下一〙 あらだ・つ 〘他タ下二〙
① 荒くする。はげしくする。「声を荒立てる」
② 人を怒らせる。腹を立てるようにしむける。腹立たせる。
落窪(10C後)一「にくし。な縫ひ給ひそ。今少しあらだてて惑はし給へ」
③ 物事をさらにもつれさせる。もめていることなどを表沙汰にする。
※源氏(1001‐14頃)真木柱あはれと思ひつる心も残らねど『この頃、あらだてては、いみじきこと出できなむ』と思ししづめて」

あら‐だち【荒立】

〘名〙
① 荒立つこと。
※今年竹(1919‐27)〈里見弴〉渡風流水「気の荒立ちをとり収める良薬
浄瑠璃演劇などで本読みの次にだいたいの動きをつけてする稽古。荒立て。
忘却の河(1963)〈福永武彦〉三「もうじき読みが終って荒立(アラダ)ちになったら、とても早くは帰れなくなるわ」

あれ‐た・つ【荒立】

〘自タ五(四)〙
① (「あれだつ」とも) 天候などがはげしく荒れる。荒々しい状態になる。激しく振り動く。
※新浦島(1895)〈幸田露伴〉一「浜風荒れ立ち千鳥啼く夜」
② 心や行動などが荒れ始める。あばれだす。
※有明の別(12C後)二「あれたちて、うるはしくだにむかひきこえ給はず」

あら‐だて【荒立】

〘名〙 =あらだち(荒立)②〔楽屋図会拾遺(1802)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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