日本大百科全書(ニッポニカ) 「菩提道次第論」の意味・わかりやすい解説
菩提道次第論
ぼだいどうしだいろん
Lam rim chen mo
チベットの仏教書。チベット仏教ゲルクパ派(ゲルク派)の始祖ツォンカパの顕教関係の主著。「ラムリム」ともよばれる。1402年に書かれた。1042年にチベットに入って法を伝えたインド僧アティーシャの『菩提道燈論(ぼだいどうとうろん)』に論の綱格をとり、人天乗(世間的教え)→小乗→大乗と向上する修行の次第を説く。菩薩乗(ぼさつじょう)の六波羅蜜(ろくはらみつ)中、禅定(ぜんじょう)と智慧(ちえ)を解説する部分が本書の中心をなすが、とくに智慧を解説する章において、自立論証派を否定するチャンドラキールティ(月称(げっしょう))らの帰謬(きびゅう)論証派の思想を絶対視して、ツォンカパ独自の中観(ちゅうがん)哲学を樹立した。チベット仏教におけるもっとも重要な書物と考えられる。
[松本史朗]