改訂新版 世界大百科事典 「チャンドラキールティ」の意味・わかりやすい解説
チャンドラキールティ
Candrakīrti
7世紀,インド仏教の中期中観派の代表的思想家。生没年不詳。月称と漢訳される。空性の論証が自立的に成立するとする清弁(しようべん)の自立論証の思想と,認識が自立的に成立するとする唯識派の自己認識の理論を批判して,すべては相関的であるという空性の本義を高揚した。その立場は,チベットの伝承で〈自立論証派〉と呼ばれる清弁の立場に対し,自らは主張をもたずただ対論者の主張の過失を指摘することによって空性を論証すべきことを主張し,〈帰謬論証派〉と呼ばれ,特にツォンカパにおいて絶対視された。著書に,《入中論》《中論註プラサンナパダー》(両者ともサンスクリット原典現存)の二大主著のほか,《空七十論》《六十頌如理論》《四百論》などの注釈がある。
→中観派
執筆者:松本 史朗
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