日本大百科全書(ニッポニカ) 「萬金産業袋」の意味・わかりやすい解説
萬金産業袋
ばんきんすぎわいぶくろ
江戸時代の商品学書。六巻六冊。著者の三宅也来(みやけやらい)の伝は不明だが、本文中にしばしば京都に実在した職人名や店舗名があげられているので京都の人らしい。1732年(享保17)刊。第一巻に印判、硯(すずり)、墨(すみ)、筆、絵の具などの巧芸品から紙、傘(かさ)、提灯(ちょうちん)に至る日用品の製作、第二巻に刀剣の製作、第三巻に漆器、蒔絵(まきえ)、印籠(いんろう)、目鏡(めがね)、硝子(ガラス)細工など、第四巻と第五巻が衣服部門で羅紗(らしゃ)や羽二重(はぶたえ)、結城紬(ゆうきつむぎ)などの商品を説明、第六巻酒食門では酒、醤油(しょうゆ)、酢、菎蒻(こんにゃく)、索麺(そうめん)、ところてん、地黄煎(じおうせん)、引茶(ひきちゃ)と煎茶(せんちゃ)の製法と産地を詳述する。消費者がある程度の商品知識をもてば商人も無知につけこんで高利をむさぼることはしない、という考えで書かれ、商品の符丁や単位も公開している。
[小柳輝一]
『三宅也来著、吉田光邦解説『萬金産業袋』(1973・八坂書房)』