精選版 日本国語大辞典 「提灯」の意味・読み・例文・類語
ちょう‐ちん チャウ‥【提灯・挑テウ灯】

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ろうそく用灯火具。螺旋(らせん)状に巻いた割竹(ひご)を骨とし、これに紙を張り、上に口輪、下に底輪をつけて、折り畳みできるようにした日本独特の灯火具。夜間の携行用のほか、屋外の照明・目印としても用いた。形には球形、円筒形、棗(なつめ)形などいろいろある。
古くは「挑灯」と書き、木枠に紙を張り、吊灯籠(つりどうろう)のように一か所に掲げ置いたものであったが、やがて籠(かご)に紙を張り、携行用の取っ手をつけた籠(かご)挑灯となった。天正(てんしょう)・文禄(ぶんろく)(1573~96)のころには折り畳みできるものとなり、手に提げる灯火具ということから、提灯の文字があてられるようになった。挑灯は一か所に掲げ置く灯火、提灯は携えてゆく灯火の意で、この灯火具の発生過程を物語っているといえよう。これが江戸時代に入ると、在来の行灯(あんどん)にかわって、携行用灯火具として流行し、各種の提灯がつくりだされた。さらにこのころ、火袋(ひぶくろ)を携えて、客の求めに応じて、即時に提灯の張り替えや、提灯に家紋を描き、桐油(とうゆ)を引くなどする職人も現れ、また、その生産・販売を専業とする提灯屋も現れた。
提灯には大小いろいろあるが、筥(はこ)提灯は、折り畳むと1個の箱になるようにつくられ、初めは一般的に用いられたが、やがて儀式用となり、のちには遊里などで客の送迎に使用され、吉原提灯、奴(やっこ)提灯とも称された。それは、吉原で使われたり、武士の供をする奴が持って足元を照らすのに用いたためである。小田原(おだわら)提灯は、相州(神奈川県)小田原の甚左衛門がつくったのに始まるといわれ、円筒形の小形・軽便なもので、もっぱら旅行用とされた。享保(きょうほう)年間(1716~36)から小田原名物として広く売られ、畳んで懐(ふところ)に携帯できることから懐提灯・袂(たもと)落しとも称された。ぶら提灯は、棒の先端にぶら下げて持ち歩いた球形や棗形の粗末なもので、広く民衆の間に用いられたが、武士が馬乗りに用いた馬乗提灯はその上製品である。また赤・紅白など色彩を施した小形の酸漿(ほおずき)提灯もこの一種で、今日でも祭事・祝賀用の装飾や提灯行列などに用いられ、海外にも輸出されている。弓張(ゆみはり)提灯には、球形と円筒形のものがあるが、いずれも竹弓の弾力を利用して火袋を上下に張って安定させたもので、初め武士が使用したが、のちに火消し人足や御用聞きなど広く商家でも使用するようになった。高張提灯は、棗形の大形の提灯で、長竿(ながざお)の先端につけ、口輪と底輪を留めて張った。これには定紋(じょうもん)や屋号その他の文字が書かれ、社寺や役所の門前、商家の店頭などに高く掲げて門灯とし、また行列の先頭に掲げて、一種の目印としても利用された。吊(つり)提灯は、ぶら提灯より大形で、社寺への献灯や祭礼の御神灯(ごしんとう)として用いた。岐阜提灯もこの吊提灯の一種で、盆提灯や装飾用として種々の形態・色彩のものがつくられ、近年は海外への輸出も盛んになっている。このほか、江戸時代の優れた発明品の一つに、携行探照具の龕灯(がんどう)提灯がある。これは、強盗(がんどう)とも書き、一名忍び提灯ともいい、どのように振り回しても、ろうそくの明かりが絶対に消えない巧妙な機構になっており、目明(めあか)しなどが夜間の捜索に使用した。
提灯の製作工程は、まず八ないし12枚のハネの上下を万力で固定し型組みをし、次に割竹(ひご)の一端を斜めに削りクチガミをつけ、ハネにその割竹を巻き付け、クチガミで留める。割竹には、細・中太・太・極太があり、提灯の大きさによって使い分ける。割竹の間に木綿(もめん)糸を1本ずつからげ、これを固定し、糸張りをする。ソクイという米の糊(のり)で糊付けをし、これに紙をのせ、霧を吹いて、一間おきに張ってゆく。これに定紋や文字を書き、さらに上から油を塗ることもあり、ろうそく立て、底輪など道具付けをして完成する。現在、提灯の生産地としては、岐阜市と福岡県八女(やめ)市が名高い。
[宮本瑞夫]
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出典 日外アソシエーツ「事典 日本の地域ブランド・名産品」事典 日本の地域ブランド・名産品について 情報
…生活上の灯火用具として,江戸期を通じて使用された蠟燭(ろうそく)や灯心などの光源は劇場の内外で多用された。特に提灯は火袋に役者の名や紋を入れることができたので装飾的,儀式的な効果として使われた。劇場の見物席,両側の桟敷上方に役者の名前などを書いてつるす〈場吊り提灯〉などその慣習は今も劇場に伝わっているが,提灯の灯具の機能・特性からは,舞台全体に光を与える全体照明としての効果は少なかった。…
※「提灯」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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