日本大百科全書(ニッポニカ) 「ところてん」の意味・わかりやすい解説
ところてん
ところてん / 心天
寒天原藻のテングサなどを煮て、寒天質を抽出し、冷やし固めたもの。これをところてんつき(てんつき)に入れて線状に突き出し、酢じょうゆや蜜(みつ)をかけて食べる。ところてんは日本独特の海藻製品で、奈良時代から食用されていたことが正倉院の宝物中に記録されている。テングサは古くは、こるもは、こころふと(心太)といい、これからつくった食品ところてんも、初めはこころふとであったのが、こころてい→こころてん→ところてんに転訛(てんか)したものであろうといわれている。
ところてんには寒天質以外の不純物を含んでいるので、多少磯(いそ)臭いにおいがする。冷やし固めたところてんを凍結させたあと、溶かして不純物を除き、乾燥させたものが寒天である。最近のところてんは、寒天を材料としてつくられているものが多い。これは、寒天を水でふやかし、水を加えて煮溶かし、冷やし固めたあとてんつきで突き出す。原藻からつくったものに比べ、色つやはよいが、磯の香りがなく、弾力も少ない。
ところてんは99%が水分で、タンパク質、炭水化物、無機質をごくわずか含むほか、脂質、ビタミン類は含有しない。固形分としての炭水化物はガラクタンで、ほとんど消化されない。ところてんは透明感があり、柔らかい感触は涼味をそそるところから、夏の味覚として古くから親しまれてきた。
[河野友美]