改訂新版 世界大百科事典 「著到」の意味・わかりやすい解説
著(着)到 (ちゃくとう)
中世武家社会で,変事や戦闘にさいし,軍勢催促に応じて馳せ集まる軍勢到着の意。また不時の出陣命令を受けてそれに応じ,あるいはみずからこれを聞いて自発的に参着したことを記して提出する文書を著到状といった。大将または軍奉行はこれに承認の旨の文言と署判を与えた。参陣した武士は著到状を提出し,著到帳に自己の姓名を登載してもらい,著到状に証判を加えて返付してもらう。著到状は変事にさいして軍事勤務をはたしたことの証明書でもあり,後日恩賞請求の根拠とされた。一般にこれは臨時の変事に提出されるもので,あらかじめ割り当てられた勤務,例えば大番役,異国警固番役などの勤仕(ごんじ)の場合は該当しない。その様式は大別して2型あり,一つは何某が何々の件で参集した旨を記すもの,一つは単に〈著到〉と書き出し,その下に年月日を入れ,次行以下に姓名を列挙するものであった。
→軍忠状
執筆者:関 幸彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報