薫・香(読み)かおる

精選版 日本国語大辞典 「薫・香」の意味・読み・例文・類語

かお・る かをる【薫・香】

〘自ラ五(四)〙
① 煙、霧などが立ちこめる。また、火の気、潮の気などが漂う。
書紀(720)推古三年四月(岩崎本訓)「嶋人、沈水と云ふことを知らず、薪に交(か)てて竈に焼(た)く。其烟気遠く薫(カヲル)
② よいにおいがする。
※享和本新撰字鏡(898‐901頃)「淑郁 香気之盛曰淑郁 加乎留」
源氏(1001‐14頃)匂宮「遠く隔たる程の追風に、まことに、百歩のほかも、かほりぬべき心地しける」
③ 顔、特に目元などがつやつやと美しく見える。〔新撰字鏡(898‐901頃)〕
※源氏(1001‐14頃)薄雲「つらつきまみのかほれるなど、いへばさらなり」
[語誌]元来は、香に限らずすべて物の気が漂うことをいったが、次第に香気を感じることにいうようになり、「におう(にほふ)」と類似してくる。「におう」は元来、「色がきわだつ」意で、それが影響して他の物が照り映える、また、嗅覚で感じる意にも用いられるようになった。現在では、「かおる」は好ましい香に限られ、文章語、雅語的である。

かおり かをり【薫・香】

〘名〙 (動詞「かおる(薫)」の連用形名詞化)
① よいにおい。香(か)
※源氏(1001‐14頃)花散里「近き花橘のかほりなつかしくにほひて」
② 美しい色つや。つややかな美しさ。
※源氏(1001‐14頃)柏木「のどかに、恥づかしきさまも、やう離れて、かをりをかしき顔ざまなり」

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