日本大百科全書(ニッポニカ) 「薬用菌類」の意味・わかりやすい解説
薬用菌類
やくようきんるい
薬になる菌類を意味するが、主たる菌類はキノコである。中国で出版された『中国薬用真菌』第二版(1978・劉波(りゅうは)著)によると、薬用菌類として117種があげられている。このうち10種ほどはカビ型の菌であるが、他はキノコである。薬用としてのキノコの利用は中国で多く、日本では、その大部分が民間薬的に用いられている。日本の漢方医学で重視されるものとしては、麦角菌(ばっかくきん)、冬虫夏草(とうちゅうかそう)、猪苓(ちょれい)、茯苓(ぶくりょう)、霊芝(れいし)などがある。しかし、近年では、菌類の薬用的効果に対して医学的、化学的、生物学的研究が行われるようになっており、菌に対する認識も改められてきている。とくに注目されるのは、ある種の菌がもつ制癌(がん)性、血圧降下性、抗ウイルス性などである(たとえばカワラタケがもつ制癌性など)。しかし、これらは特定の菌だけがもつものではなく、もっと普遍性があるという考え方も出されている。それを代表するのが菌食論である。したがって、薬用菌類は治療医学的に利用されるよりも、予防医学的または保健医学的見地から評価されるものだといってよい。
[今関六也]