血管性紫斑病(読み)けっかんせいしはんびょう(その他表記)Vascular purpura

六訂版 家庭医学大全科 「血管性紫斑病」の解説

血管性紫斑病
けっかんせいしはんびょう
Vascular purpura
(子どもの病気)

どんな病気か

 小児に好発する免疫学的な機序(仕組み)による全身性の小血管炎です。紫斑、腹部症状、関節症状が3大徴候として認められます。アレルギー性紫斑病やヘノッホ・シェーンライン紫斑病とも呼ばれます。

原因は何か

 溶連菌(ようれんきん)マイコプラズマなどの感染症、薬剤、さまざまな食べ物の摂取などを引き金として、免疫反応の異常が起こることが原因とされています。免疫グロブリンのひとつであるIgAの産生が亢進し、IgA免疫複合体が形成されます。さらにIgA免疫複合体が全身の小血管壁へと沈着し、局所での血管透過性の亢進や炎症反応が引き起こされ、症状が現れると考えられています。

症状の現れ方

①皮膚症状

 下肢伸側に好発する紫斑がほぼ必発です。しかし関節症状や腹部症状が先行する場合もあり、本症が疑われた際には注意深く観察する必要があります。

②関節症状

 (ひざ)や足の関節に好発する関節痛が約60%程度でみられます。

③腹部症状

 腹痛嘔吐、血便などが約60%にみられます。激しい腹痛を訴えることも少なくなく、急性虫垂炎(ちゅうすいえん)などの外科的疾患との区別が重要です。

④腎症状

 紫斑、関節症状、腹部症状は一般的には数週の経過で改善しますが、腎障害を合併した場合には長期の経過観察が必要になります。腎障害はほとんどが発症後3カ月以内に発生し、軽度の血尿・蛋白尿から急性腎炎ネフローゼ症候群を来す場合もあります。

検査と診断

 典型的な症状を示す場合には診断は容易です。症状が紫斑だけの場合には血液検査が必要です。血小板の数は正常で血液凝固系検査も正常です。凝固第ⅩⅢ因子の低下が認められることもありますが、本症に特有な所見ではありません。腎症状のチェックのために尿検査も行います。

治療の方法

 安静や止血薬投与などの対症療法が行われます。腹痛の強い場合には絶食と補液、ステロイド薬の投与が行われることもあります。凝固第ⅩⅢ因子が低下し腹痛や関節症状が強い時には、第ⅩⅢ因子製剤の投与も試みられています。紫斑病性腎炎を合併した時には腎専門医による管理が必要です。

高橋 良博, 伊藤 悦朗

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 「血管性紫斑病」の解説

けっかんせいしはんびょう【血管性紫斑病 Vascular Purpura】

◎血管の異常で紫斑ができる
[どんな病気か]
 血管がもろくなったり、血管に炎症がおこって、出血しやすくなって紫斑(しはん)ができる病気を、血管性紫斑病といいます。また、血管内部の圧力が高まって紫斑ができることもあります。
 血管性紫斑病には、アレルギー性紫斑病(せいしはんびょう)(「アレルギー性紫斑病(アナフィラキシー様紫斑病/シェーンライン・ヘノッホ紫斑病)」)、単純性紫斑病(たんじゅんせいしはんびょう)(「単純性紫斑病」)、老人性紫斑病(ろうじんせいしはんびょう)(「老人性紫斑病」)、症候性血管性紫斑病(しょうこうせいけっかんせいしはんびょう)(「◎その他の血管性紫斑病」)などがあります。
 単純性紫斑病や老人性紫斑病は、出血が止まらなくなったりすることはなく、治療しなくてもよいもので、心配する必要はありません。
 治療が必要なのは、アレルギー性紫斑病と症候性紫斑病です。アレルギー性紫斑病は、紫斑病のなかでの割合も高く、いろいろな症状をともないます。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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