皮膚内および皮下組織内における出血斑の総称で、紫斑病ともいう。大きさによって分けられ、小さいほうから点状出血斑、斑状出血斑、びまん性出血斑とよばれる。紫斑の色調は、出血している部位や時間経過に伴いさまざまで、浅いものは鮮紅色調、深いものは赤紫色調である。これらは時間の経過とともに褐色から黄褐色調を帯び、しだいに消退していく。鮮紅色調の紫斑はときに紅斑と区別しがたいことがあるが、紅斑とは異なり、ガラス板で圧を加えても色調が消退しないことから鑑別できる。紫斑はそれを引き起こす種々の原因によって次のような三つに大別される。
(1)血管の障害による紫斑 原因疾患としては、後天性のものとして敗血症などの感染症、薬物アレルギー、ビタミンC欠乏による壊血病、慢性腎(じん)不全などに伴う尿毒症、糖尿病、動脈硬化症、そのほか血清タンパク異常である高グロブリン血症、クリオグロブリン血症などがある。また皮膚アレルギー性血管炎、シェーンライン‐ヘノッホSchönlein-Henoch病、結節性動脈炎などの血管炎も、その代表的疾患である。なお、打撲に伴う機械的紫斑もこのなかに含まれる。一方、遺伝性出血性末梢(まっしょう)血管拡張症(オスラーOsler病)は先天的な血管脆弱(ぜいじゃく)性のために紫斑をしばしば引き起こす。
(2)血管外結合組織の異常に伴う紫斑 たとえば老人にしばしば認められる老人性紫斑をその代表とするが、ほかにエーラース‐ダンロスEhlers-Danlos症候群などの遺伝性疾患やクッシング症候群にも伴うことが多い。
(3)血小板減少による紫斑 白血病などの血液悪性腫瘍(しゅよう)、再生不良性貧血、骨髄線維症、悪性貧血などといった血小板産生障害を引き起こす疾患群や全身性紅斑性狼瘡(ろうそう)などの膠原(こうげん)病、特発性血小板減少性紫斑病(ウェルホーフ病)や薬物アレルギー、脾(ひ)機能亢進(こうしん)症などにみられるように血小板破壊の亢進によって引き起こされる。また体内での血小板の消費が異常に亢進した状態、たとえば重症熱傷(やけど)や重症感染症、悪性腫瘍末期などにみられる血管内凝固症候群や血栓性血小板減少性紫斑病などでも認められる。ときに保存血の大量輸血などのように、体内の血液が急速に希釈されたときにも生ずることがある。
治療は、紫斑を引き起こした原因となる疾患を正しく把握することがもっともたいせつであり、それに伴い種々の治療法が選択されるべきである。
[古江増隆]
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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