国指定史跡ガイド 「行基墓」の解説
ぎょうきのはか【行基墓】
奈良県生駒(いこま)市有里町にある奈良時代を代表する僧の墓。生駒山東麓にある丘陵端の東斜面に位置する竹林寺境内に所在する。奈良時代天平期の僧侶の火葬墓の形態を残していることなどから、小文字珠山と称する一帯が1921年(大正10)に国の史跡に指定された。1235年(文暦2)、竹林寺の僧と信徒によって境内から墓誌が掘り出されたが、唐招提寺への「注進状」と1236年(嘉禎2)の『生馬山竹林寺縁起』にはその状況が記されていた。これらによれば、八角形の石筒のなかにあった2重の銅筒のさらに内側の銀瓶には行基の舎利が納められ、銀瓶の頸部には「行基菩薩遺身舎利之瓶」の銘を記した銀の薄札が垂れ下がっていたという。銅筒には墓誌銘文が記されており、その全文は唐招提寺所蔵の『大僧上舎利瓶記』によって知ることができる。現存する墓誌は残欠で、長さ10.6cm、幅6.7cmの内に反(そ)りのある不正三角形の銅板で、表面に鍍金(めっき)がなされている。近畿日本鉄道生駒線一分駅から徒歩約10分。