日本大百科全書(ニッポニカ) 「衝突予防装置」の意味・わかりやすい解説
衝突予防装置
しょうとつよぼうそうち
レーダーから得る情報を基にして、レーダー観測者が1隻の船に対して手動で行うのと同程度のレーダープロッティングを、複数の船について自動的に実行し、衝突の危険の状況評価をする装置。衝突予防援助装置、自動レーダープロッティング装置、ARPA(アルパ)(automatic radar plotting aidsの略)、簡単な装置をATA(automatic tracking aid)などという。国際海事機関によって性能基準が定められており、500トン以上の船舶は装備が義務づけられている。レーダープロッティングとは、レーダーで他船を検出し、方向や速力、将来、自船と危険な関係が生ずるかどうかを計算し作図することをいう。ARPAはレーダーから得る他船の方位と距離を連続して記憶し、他船の針路と速度をコンピュータで計算する。そして、他船までの現在方位と距離、他船がもっとも接近する点(closest point of approach略してCPA)までの距離と所要時間(time to CPA略してTCPA)、他船の真針路、真速度、などの情報がいつでも得られるようになっている。もし衝突の危険がある場合には、自船の針路、速力をどう変えたら危険が避けられるか、新たな危険が発生しないかなどすべての影響をシミュレートして、表示面上で明瞭(めいりょう)に示すことができる。このシミュレーションを試行操船とよんでいる。試行操船ののちに実際に変針を行うと、1隻を避航したことによって新たな危険船が発生することがない。
[飯島幸人]