裁量労働制度(読み)さいりょうろうどうせいど(英語表記)discretionary work system

知恵蔵 「裁量労働制度」の解説

裁量労働制度

仕事の遂行方法や手段、時間配分を使用者が具体的に指示することが困難な業務について、労働基準法によりその遂行を労働者本人に委ねる制度。業務の性質上、労働者の裁量に委ねることが適当な業務について、労使協定締結・届け出を要件に、実際の労働時間にかかわらず労使協定で定めた時間数を、労働したものとみなす(みなし労働時間制度)。1987年の労働基準法改正により、弾力的労働時間制の1つとして導入された。実際に労働する時間数にかかわらず、その質や成果によって賃金を定めることを可能とする制度で、その点で能力主義型雇用制度に属している。2004年1月施行の改正法により、企業全体の事業戦略の策定などの企画業務型裁量労働制については導入要件が緩和され、新商品・技術の研究開発など専門業務型裁量労働制についても、健康・福祉確保や苦情処理措置などを労使協定に盛り込むことが義務づけられた。

(桑原靖夫 獨協大学名誉教授 / 2007年)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「裁量労働制度」の意味・わかりやすい解説

裁量労働制度
さいりょうろうどうせいど

仕事のやり方や時間配分を労働者本人の判断にゆだね,実働時間にかかわらず仕事の成果によって,所定時間働いたものとみなす制度。 1987年の労働基準法改正により規定されたもので,実施にあたっては労使協定を締結し労働基準監督署に届け出ることが必要。当初は通常の時間管理に不向きな研究者や弁護士デザイナーなど専門性の強い 11業種のみが対象であったが,その後,業務形態や就業形態が多様化したことから,対象業種の拡大を求める声が高まり,98年の同法改正で,企画・立案,調査などに従事する事務労働者にまで対象が拡大された。しかし一方で,同法によってサービス残業が合法化されたり,労使協定の締結を拒否した場合に不利益をこうむるなどの危険性が指摘されている。

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