改訂新版 世界大百科事典 「褐色粘土」の意味・わかりやすい解説
褐色粘土 (かっしょくねんど)
褐色粘土は生物遺骸を重量で30%以下(平均で有孔虫9%,放散虫0.7%)を含む遠洋性粘土で,直径4μm以下の粒子が約80%を占める。それは全海洋面積の28%を占め,水深4500~7000mの大洋底に分布し,それより浅くなると石灰質軟泥に漸移する。その色は赤色がかった褐色ないしチョコレート色を帯びた褐色で,赤粘土red clayと呼ばれたが,最近は褐色粘土brown clayが正式に使用されている。その色は鉄とマンガンの水酸化物によるもので,酸化環境の海底で生じたためである。構成鉱物で最も多量なのは粘土鉱物(イライト,モンモリロナイト,カオリナイト,緑泥石)で,その海底分布からみて,それらは陸上の風化帯より来たと考えられる。粗粒部分にはフィリップサイト,マンガン微小団塊などの海底自生鉱物,放散虫,有孔虫,ケイ藻,魚歯など生物殻,テクタイト,火山ガラスなどがある。このように構成物が多方面に由来する(多源的な)ことが褐色粘土の特徴の一つであり,また従来いくつかの成因説(生物殻溶解説,火山噴出物の変成説,陸源粘土説,宇宙塵説)が提唱された理由である。
→海底堆積物
執筆者:内尾 高保
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報